ミニマルミュージックを語る上で欠かせないアメリカの音楽家=ジョン・ギブソン、彼の1973年から77年の未発表音源をまとめた編集盤が登場しました!
1960年代半ばから優れたリード楽器演奏家として数々のミニマル・ミュージックの名演へ参加してきたジョン・ギブソン。テリー・ライリーの『In C』やスティーヴ・ライヒの『Drumming』の録音に参加、フィリップ・グラス・アンサンブルの創立時のメンバーであり、ラ・モンテ・ヤング率いるThe Theatre Of Eternal Musicのメンバーでもあった…と並べてみると彼のエリートっぷりが顕著に分かりますが、それだけ彼がミニマル・ミュージックの発展に寄与してきた逸材だったということの証明になるでしょう。そんな彼が自作曲へ取り組みだしたのは70年代に入ってからのこと。どこかリュック・フェラーリ的なミュージック・コンクレートやコラージュ感もあった『Visitation』、より器楽的な要素に注目・パイプオルガンとフルートというふたつの楽器によるミニマリスティックな名盤『Two Solo Pieces』などの重要作品を残しています。
そして今回登場した『Songs & Melodies』は、タイトル通り1973年から1977年の彼の録音を収録した編集盤…なのですが、ここに収録された音楽はそのほとんどが未発表というとんでもない代物です!!楽曲も『Visitation』や『Two Solo Pieces』に収録された楽曲群に確かに通じるものばかり…どこかのフォークミュージックからフレーズを参照・抽出し反復させたような弦楽アンサンブル楽曲、禁欲的でかなり内省的・瞑想的な響きが徐々に開放されていくピアノ独奏(倍音の鳴り方が息を呑むほど美しい…)、シンセサイザーのフィルター処理をしたように艶めかしく変化する音色をベースに、フレーズ自体が単音からやがて流麗なものへと変化していくアンサンブル楽曲などなど、先人の個性的なキャラクターを丁寧に咀嚼しながら自己流に捌き、結果オリジナリティ溢れる自分自身のスタイルを構築してしまったこの人の器用さには驚かされるばかりです。
しかも演奏家を見ればびっくり、アーサー・ラッセルにジュリア・イーストマン、さらにはバーバラ・ベナリーが参加しているのです。50年代後半に生まれた「ミニマル」という概念が、次世代に対してどう引き継がれていったのかがよく分かる一連の系譜がここに刻まれています。そしてその継ぎ目にジョン・ギブソンがいる───これは見落とされがちながら、とても重大な史実ではないでしょうか。
これまでの作品に比較すると、本作は彼の多彩さがよく出ている内容とも言えるかもしれません。綿密に考え抜かれた響きと、それを一瞬にして転換させる大胆さを交えるテクニック。長年の西洋音楽の歴史が積み重ねてきた技術を自己流に解釈しながら創造されていく楽曲群は、その口数こそ少なめでも、実に雄弁で豊かです。
発売・販売元 提供資料(2023/06/21)