●宿無し犬
物心ついて間もなく満州から引き揚げ高松で母を失ったというのが履歴で、手製のコルトを女を抱いている時も離さぬ男。いくつも偽名を持っているこの男の本名は、鴨井大介……
●喧嘩犬
シャバでは女にモテ過ぎハジキを片手に暴れまくった鴨井大介も、さすがに刑務所暮らしは窮屈。やがて出所の日を迎えた大介が一足先に出所した同房の小吉の家を訪ねると、小吉は女房の町子を暴力団に盗られた上、暴力事件の実態を取材中のブン屋 佐々木からしつこく質問をされている最中だった。大介は持ち前の義侠心から町子のいるガイド・クラブに乗り込んだのだが……
●ごろつき犬
スケとハジキに明け暮れる大介も一人前に正月を迎えた。しかも白浜温泉で。キャデラックに乗ったスゴイ美人につかまり無理やりに連れてこられたのだった。しかし湯につかって気分をほぐすなどというイキなことは大介の性分に合わない。2日目からは時間を持て余し始めた。しかし、その晩ここに連れて来てくれた美人が部屋にやってきて……
●暴れ犬
日本の"カスバ" 大阪は西成界隈に舞い戻ってきた鴨井大介は、一泊百円のドヤで肺病を病んだ林という男から精巧な小型拳銃を見せられた。大介はこの拳銃にほれ込んだが、林の頼みで故物買いの十一階百貨店に売りに出かけた。ところがそこには土井刑事が先回りしており大介にも探りを入れてきたので早々に引き上げた。ところがドヤでは林が腹に風穴を開けられ……
●鉄砲犬
暇つぶしに九州で遊んだ鴨井大介が伊丹空港に降り立った。懐には30万円の大金が入っていた。新世界の大衆酒場"大安"の暖簾をくぐり好物の豚汁をすすっていたが、置き引きの小六が大介のボストンをかすめた。不幸中の幸いは30万を懐にしまっておいたことだ。この大金は九州の賭場で知り合った小玉一夫から大阪に居る病身の母に届けてくれと依頼されたものだった……
●続鉄砲犬
このところ勝負運にトンと見放されたのか、何をやってもすべてダメ。ある日、前夜バーで出会った美女が大介を訪ねてきた。彼女は貿易商を営む秋津専作の娘で京子と名乗った。父が秘蔵する中国の古銅器を展覧会に出品するため東京へ運ぶことになったが、大介に護衛としての白羽の矢を立てたのであった……
●野良犬
相変わらず、住所不定、安宿から安宿へハジキ一挺の一人旅を続ける鴨井大介は今東京に居る。不慣れな競輪の予想屋をやっているがどうもうまくいかない。同業の常さんが見かねて紙切れを大介に渡し、平和荘の玉子を尋ねてみろという。夜の道を急ぐ大介は、国道で見知らぬ少女がスポーツカーにはねられたのに遭遇……
●早射ち犬
東京のネオン街を相棒の常さんと流していた鴨井大介は、ひょんなことから宮本エミという可憐な少女と知り合った。エミはたった一人の姉 文子を探しているという。大介は持ち前の義侠心から文子を探すことに……
●勝負犬
相棒の常さんと競艇予想屋を楽しんでいる鴨井大介。最終レース、大穴がでるかどうかのデットヒートを展開する場内で謎の射殺事件を知る。凶器となったのは伝説の無音・無光・無煙の拳銃……。ガイシャは大阪の暴力団大西組の幹部・中沢忠雄という男だった。