OVALは何度でもヴァージョンアップする。
2020年代の音楽、その設計と実装。―― 佐々木敦
90年代中盤、CDスキップを使用したエポック・メイキングな実験電子音響作品を世に送り出し、エレクトロニック・ミュージックの新たな可能性を提示し続け、世界中にフォロワーを拡散させた独ベルリン在住の音楽家、オヴァルことマーカス・ポップ。ファンキーでダンサブル、ハウシーでソウルフなオヴァル流クラブ・トラックを全編に配した2016年のアルバム『popp』(oval 2 / HEADZ 214)から約3年振りとなる新作が米スリル・ジョッキーを通してワールドワイドにリリースされることとなった。
2019年11月に配信のみで発表された5曲入りEP『Eksploio』に続き、10曲入りのフル・アルバム『SCIS』が日本先行で登場する。
10年前にリリースされた2枚組の大作『o』では、ポスト・ロック的ともいえるアプローチにて、実際には打ち込みのオーガニックなドラム・サウンドがアンサンブルの要素として使用されたが、今作『SCIS』では、ピアノ、木管楽器、ストリングスといったアコースティック楽器がビートメイキングのループの要素として使用され、複雑ながらも繊細かつアブストラクトなダンス・サウンドが構築されている。
マーカス・ポップのコンポーザーやサウンドデザイナーとしての非凡なる才能を改めて実証するかのような、非常に革新的で独創的な内容になっており、マーカス関連作品の中でも最もメロディーが際立った楽曲揃いの作品集となっている。『popp』でのクラブ・ミュージック的なアプローチを更にアップデートし、オヴァル史上最も「ポップ」な作品をまたしても更新した。
日本盤CDは、ボーナス・トラックとしてEP『Eksploio』を全曲収録し、ロマンティックでエモーショナルな最新オヴァル・サウンドを存分に堪能出来る。
◎解説封入:小野島大 / 伏見瞬
◎日本盤のみボーナス・トラック5曲収録(EP『Eksploio』を世界初CD化)
◎日本先行発売
発売・販売元 提供資料(2020/01/14)
90年代中盤、CDスキップを使用したエポック・メイキングな実験電子音響作品を世に送り出し、エレクトロニック・ミュージックの新たな可能性を提示し続け、世界中にフォロワーを拡散させた独ベルリン在住の音楽家、オヴァルことマーカス・ポップ約3年振の新作。 (C)RS
JMD(2019/12/21)
前作ではオヴァルなりのポップな作風を試みたが、それを更に推し進めたのが今作『SCIS』。声の素材こそほぼ皆無だが、ビートメイカーにも負けない肉感的グルーヴ、随所で耳を奪われる美麗かつ心躍るメロディ、プリペアド・ピアノ/木管楽器/ストリングスなど優しい音色をビートの素材として使用といったことが相まって、間口の広さは前作と同等かそれ以上だろう。しかし、まるで即興演奏のように予測の出来ない複雑なリズムと先述した要素が緻密に重なり合う楽曲は、取っ付き易さとは裏腹に腰を据えて何度でも聴き直したい面白さを秘めている。
intoxicate (C)青木正之
タワーレコード(vol.144(2020年2月20日発行号)掲載)