ジム・ベアード、ジョン・ヘリントン
ジャズ、クロスオーバー・ミュージックのフィールドほか、スティーリー・ダンを支えるメンバーとしても活躍する2人のDUO!
ロックへの愛情とジャズの伝統への敬意を感じさせる多彩な8曲
ロック、ポップ、ボサ、ブルース、ジャズ・・良質なサウンド・クリエーション
1980年代より交流をもち、ジャズ・フィールドはもちろん、不滅のAORサウンドをクリエイトするグループ"スティーリー・ダン"を支えるメンバーでもある、2人のミュージシャンによるデュオ・アルバム。
ジム・ベアードは、ローランド・ハナ、ジョージ・シアリングといったロマンティシズムあふれるオリジナルで端正な演奏をみせるアーティストに師事したピアニストで、パット・メセニーの『シークレット・ストーリー』や、ウェイン・ショーターの作品にも参加。またアレンジはドン・セベスキーに師事し、マイケル・ブレッカー、ジョン・マクラフリンらにも楽曲を提供してきたほか、デニス・チェンバース、マイク・スターン、イリアーヌほか、数々の名アーティストのアルバムもプロデュース。リーダー作は、90年の『Songs of the Sun』以来6作ながら、CTIでのサウンド・クリエーションを含め、そのセンスの良さは現代屈指。近年では、ヴィンス・メンドゥーサ指揮によるメトロポールとの共演『Revolution』が記憶に新しくあります。一方ジョン・ヘイントンもクロスオーバーの世界で職人的な演奏をみせています。
本作はそんな二人のポップかつ、インティメートな演奏を収めた作品。
ピアノとギターのデュオによるジャズアルバムといえば、ビル・エヴァンスとジム・ホールによる『アンダー・カレント』が有名ですが、本作は二人の音楽的趣向が反映された作品。☆セロニアス・モンク的とも感じさせる、ニュー・オリンズ・スタイルのストライド的なアプローチが楽しく踊るジム・ベアードの曲でのオープニングを皮切りに8曲の演奏は多種多様。メランコリックなメロディとハーモニーが聴けるジョン・ヘリントンのナンバーあり、ビル・エヴァンスも演奏したM3はシナトラとジョビンのヴァージョンに寄せたボサ的なアプローチ。一方室内楽的な演奏M4で、アンダー・カレントに近づいた演奏も挟みつつ、ジョージ・ベンソンを意識したというヘリントンのギターが聴けるスタンダード曲M7のような演奏も。そして、ラストは、スティーリー・ダンの超名曲"ガウチョ"!!
ギター、ピアノという楽器は、双方がコード楽器でもあり、ハーモニー・ワーク、リズムの役割などの面において、デュエット演奏は本来向かないものでもありますが、2年半前にショート・ツアーも成功。アイディアをもちよって本作につながりました。
ロック、ポップ、ボサ、ブルース、ジャズ、それぞれの音楽の魅力が理想的に融合した演奏には、ロックへの愛情と、ジャズの伝統への敬意があります。
メンバー:Jim Beard(p), Jon Herington(g)
発売・販売元 提供資料(2020/02/10)
ジョン・マクラフリンとの共演で知られるピアニストのジム・ベアードと、スティーリー・ダン、ボズ・スキャッグスとの共演で知られるギタリストのジョン・ヘリントンによるデュオ・アルバム。ピアノとギターのデュオと言えばビル・エヴァンスとジム・ホールによる共演を思い出すが、本作は言わば21世紀版 『アンダーカレント』と言える。スタンダード・ナンバー、オリジナルをバランスよく選曲し非常に聴きやすい内容になっているが、ビル・エヴァンスの《ルーズブルース》、スティーリー・ダンの名作《ガウチョ》が特に印象に残った。古典的なスタイルを守りつつ、現代に充分に通じる聴き応えのあるサウンドでジャズ・ファン以外にも聴いて欲しい。
intoxicate (C)荻原慎介
タワーレコード(vol.143(2019年12月10日発行号)掲載)