デンマークを代表するピアニスト、カーステン・ダール、ACT 第一弾 スタンダード、ポピュラー・ソングを中心に選曲すると共に"Experience"のリズムセクションと共に"現在"をリアルに表現した一作
コペンハーゲンの名門レーベルStoryvilleから数々の作品をリリース。ジャズの伝統にのっとったスウィンギーなビートに、ビバップのフレージングを基本とした演奏で、大変人気の高いピアニスト。マシュマロ・エクスポートから日本独自の作品もプロデュースされ、ヨーロッパのこの世代のアーティストとして、日本でも屈指の知名度を誇っているといえましょう。
そんなカーステン・ダールは2010年あたりを境に作品の世界が変化。その理由が幼少時から抱えるメンタル・プロブレムによるものであったことも、本人の言によって知られ、現在に至るまで、自らの内から湧き上がったままの抽象的な表現をそのままにした作品も多くリリースしていますが、それから約10年を経て、本作には、また新しい表現の世界が記録された感があります。
全10曲のうち8曲はデンマークのフォークソングを含め、ジャズ・スタンダードおよび、ポピュラー・ソングを取り上げる構成。"オール・ザ・シングス・ユー・アー"をはじめ、"あなたと夜と音楽と""ブルー・イン・グリーン"また"枯葉"はいわずもがなの有名スタンダードであり、カーステンもかつての作品で録音した楽曲を選曲。一方、メンバーは、アブストラクトな表現が中心になったユニット"Experience"のリズムセクションのメンバーであるNils Bo Davidsenと、Stefan Pasborg。
演奏表現は、かつての録音にあったスウィンギーな4 ビートのスタイルによることなく、ここでは、アーティストの心情が自然なままに表現された根源的なものがあります。楽曲がもつメロディはそのままに残しながら、アレンジを加えてトリオで表現するという意味では、キース・ジャレットのスタンダード・トリオにも近いものもありますが、スタイル的にはヨーロッパの先鋭性が光るサウンド。カーステン・ダールがアーティストとして自身のそのままを表現した"吐露"ともいえるもの横溢しています。一方、哀愁がにじむ"Be My Love"の演奏は、病による活動休止から復活を遂げたキース・ジャレットのパーソナルなソロ作『The Melody At Night,With You』からの影響もほうふつとさせています。
25年以上のキャリアで、ウィントン・マルサリス、デイブ・リーブマンとも共演。250以上の作品で演奏し、自身のリーダー作も30作以上リリースして、今50歳を超えたアーティスト。録音は、ECMの拠点であり、カーステン自身の近年の作品を録音しているレインボウ・スタジオにて。ジャケットのペインティングも、カーステン・ダール自身によるもので、そのあたりにも、パーソナルな表現を感じさせています。
発売・販売元 提供資料(2019/08/08)