ボックス・オブ・ブレス

移民の国アメリカの混血性の高い様々なルーツ・ミュージックを現代に甦らせ、ユーモラスな形でアップデートするグループ、ハズマット・モディーン。ブルース、スウィング・ジャズ、R&Bといったアメリカン・ルーツ・ミュージックをベースに、アフリカやアジア、東欧の音楽の要素を取り入れかけ合わせていく姿勢が、アメリカ音楽ファンのみならずワールド・ミュージックのファンからも高い支持を得ています。そして2018年で活動20周年を迎えた彼らが、2015年の『エクストラ・デラックス・スプリーム』(サンビーニャ・インポート JASI-24005)以来となる新作を発表しました。

ハズマット・モディーンはウェイド・シューマン(ヴォーカル、ハーモニカ)が中心となり、ハーモニカ奏者ふたりにベース・パートを担うスーザフォン(チューバ)を含む特異な編成で1998年に結成されました。ニューヨークを拠点に活動を続けていた彼らは2006年にベルベス・レコーズからデビュー作『バハムート』(ライス BBR-338)を発表、ビルボードのブルース・チャートで12位という好成績を記録、2011年の2作目『シケイダ』(ライス JAR-5225)には、ナタリー・マーチャントや『ゴー・スロウ・トゥ・ラゴス』(ライス BDR-8004)も高評価だった西アフリカ・ベニンのガンベ・ブラス・バンドが参加し、よりディープなサウンドを聴かせました。それまで流動的だったメンバーはその後アコーディオンのメンバーが加入し、世界各地でライヴ・ツアーを行ったことで結束が固められてゆきました。その過程が2014年にリリースされた『ライヴ』(サンビーニャ・インポート JASI-476)にまとめられています。

本作は個人的な理由で発売が数ヶ月延期となってようやく発売された彼らの新作。これまでの音楽スタイルはそのままに、マリ人のバラ・クヤテによるバラフォン(西アフリカの木琴)や、ハンドメイドの擦弦楽器ダクソフォンが加わるなど、これまでになかった方向性も聴かせてくれています。とはいえ、雑多の要素が混在する中にもアメリカ音楽らしい部分で一本筋が通っているハズマット・モディーンのサウンドはこれまで通り。ブルースなどを基盤にしたその普遍の音楽性こそ、彼らの最大の魅力と言えるでしょう。