現代ピアノ界の異才、21年ぶりの新録音。
鬼才ピアニスト、イーヴォ・ポゴレリチのソニー・クラシカルからのデビュー・アルバム(長期専属契約の1枚目)で、1998年グラモフォン発売のショパン「スケルツォ」以来21年ぶりのニュー・アルバムです。生前のホロヴィッツが愛奏したラフマニノフの超弩級のロマン派ソナタ、第2番とベートーヴェンの小ぶりなソナタ第22番・第24番という2曲は、今のポゴレリチならではの個性的な選曲でいずれも彼にとって初録音であるのみならず、ラフマニノフのピアノ曲は録音するのも今回が初めてです。
録音はベートーヴェンが2016年にドイツで、ラフマニノフが2018年にオーストリアで行われました。繊細な録音が、漆黒の重味を備えた独自のピアノ・サウンドと、一つ一つの音符を明晰かつ克明に弾き分けるタッチ、そしてポゴレリチの息遣いまでも余すところなく捉えています。2019年クラシック・ピアノ界最大の話題盤といえましょう。
「ソニー・クラシカルが現在の私の仕事に興味を持ってくださってとても感謝しています。何年も前のことですが、ソニーの創業者、盛田昭夫氏にセルゲイ・ラフマニノフの自作自演のCDセットをいただきました。当時のソニーのエンジニアが開発した当時最先端のリマスタリング・テクノロジーを使って制作されたものでした。間もなく発売される私のソニー・クラシカルでの最初のアルバムにはラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番が含まれており、この不思議なご縁をとても嬉しく思っています。」―イーヴォ・ポゴレリチ
「イーヴォ・ポゴレリチがこれまでドイツ・グラモフォンに録音してきたアルバム(1981~95年の間に14枚録音)はレコード界の「七つの奇跡」の一つといえるほど貴重なものであり、私はそこに新しい録音を加えようと今まで長い間努力していきました。ポゴレリチが長い沈黙を破ってようやく録音スタジオに戻り、私たちソニー・クラシカルが今年後半に彼の新しいアルバムを発売できるなんて、これ以上幸せなことはありません。」――ボグダン・ロスチッチ(ソニー・クラシカル社長、ポゴレリチと同郷のベオグラード生まれ、1964年生)
ソニー・ミュージック
発売・販売元 提供資料(2019/07/11)
2019年もこれまで多くの話題、名盤がリリースされたが、今回発売されたポゴレリチのアルバムはまさに重要な1枚といっても過言ではない。ここ数年日本公演は頻繁に開催されているが、新録アルバムは21年間発売がされていなかった。その年数は考えただけでも計り知れないが、この度ソニー・クラシカルからのデビュー・アルバムとして長い沈黙を破った。今回収録の3曲全てにおいて共通して言えることは、ポゴレリチでしか表現できない独特的な音楽を聴かせてくれている。テクニック、強弱、テンポも踏まえて新しいベートーヴェン、ラフマニノフのソナタを聴き手に届けてくれている。1音1音じっくりと耳を傾けて聴いて欲しい。
intoxicate (C)飛田陽海
タワーレコード(vol.141(2019年8月20日発行号)掲載)