2018年の初頭にリリースした『コミュニオン』(サンビーニャ・インポート INSI-5476)が、ミニマル・ミュージックやアンビエント、チェンバー・ジャズといったジャンルのファンの間でジワジワと話題になっている韓国人音楽家パク・ジハ。その彼女が再び意欲的な作品を発表してくれました。
朝鮮伝統楽器の演奏者であり、作曲家、そして朝鮮伝統音楽の新潮流の旗手である伝統楽器デュオ"スーム"でも活躍するパク・ジハ。韓国のエクスペリメンタル・ミュージック・シーンでその名を高め、国外での活動にも積極的に取り組む彼女が、朝鮮半島の伝統的な音楽を現代的にアップデートする取り組みを始めたのは2006年、スームを結成した時でした。そのコンセプトは、伝統楽器と伝統音楽のストラクチュアを用いて現代を生きるパク自身のコンポーズによる楽曲を演奏すること。世界最大のワールド・ミュージック見本市WOMEXへの出演を始めとして、WOMADやSXSWなど欧米での演奏活動も積極的に行い、その国際的な評価を近年高めてきました。そうした中で制作されたのが、パクにとって初のソロ・アルバムとなった『コミュニオン』でした。そこでは第一線で活躍するジャズ・ミュージシャンらをバックに、パク自身のメイン楽器であるピリ(ダブルリードの竹笛)に加え、センファン(笙に似た和声管楽器)、ヤングム(ハンマー・ダルシマー)などをマルチに演奏し、神秘的な音形を創り出してくれました。
そして様々なミュージシャンとの調和に焦点を当てた前作とは異なり、本作『フィロス』では自分自身に焦点を当てるために、ここではピリ/センファン/ヤングムを中心に、すべての演奏をパク本人が担当。そのことによってパク自身の内面から湧き上がる「強力な愛」を繊細に表現しているのだそうです。ただその音楽性は内省的な方向に向かうのではなく、そんなシンプルな楽器構成を用いて彼女の卓越した音楽芸術をマクロな視点で見つめるといった感覚に満ちあふれています。
なんとも想像力を掻き立てるコリアン・アート・ミュージック!東アジアの伝統音楽/楽器に興味のある方だけでなく、ミニマル~エクスペリメンタル系の音楽のファンにも是非チェックしてほしい1枚です。
発売・販売元 提供資料(2019/07/01)
韓国では自国の伝統音楽とロック/ポップといった現代音楽や演劇とのクロスオーヴァーがかなり盛んに行われており、例えばJambinaiやブラック・ストリング、国楽B-B oyなど数えだしたらきりがなく、またその多くは国外でも高い評価を得ている。このパク・ジハもそのひとりだ。日本でも絶賛された前作とピリやヤングム、センファンといっと伝統楽器を用いている点は同様だがイーノ的アンビエントはここでは時に荒ぶれ激しく歪み、反復という手法よりも主導権を握るのは旋律。そして詩の朗読やフィールド録音も交え今作のテーマである"内面から湧き上がる強力な愛"を映像的に感情豊かに表現している。
intoxicate (C)小畑雄巨
タワーレコード(vol.141(2019年8月20日発行号)掲載)