グラミー賞ノミネート作品『You're Dead!』から5年…ケンドリック・ラマーの傑作『To Pimp A Butterfly』におけるコラボレーション、カマシ・ワシントンの大出世作『The Epic』の監修、サンダンス映画祭でプレミア上映された初監督作品『Kuso』、サンダーキャットの大ヒット作『Drunk』の大半をプロデュースし、自身のレーベル〈Brainfeeder〉をこの10年で最も一貫して革新的であり続けたレコード・レーベルに育て上げた稀代の才能フライング・ロータスが最新アルバムとともに遂に帰還!!「ある丘の上に鎮座している永遠の炎」をテーマに『Flamagra』と題された本作は、首謀者のホーム・スタジオにアンダーソン・パーク、ジョージ・クリントン、リトル・ドラゴン、ティエラ・ワック、デンゼル・カリー、シャバズ・パレセズ、トロ・イ・モワ、ソランジュ、サンダーキャット、さらにはデヴィッド・リンチまで史上最多かつ豪華極まりないゲスト陣が集結してレコーディングされた全27曲を収録。コルトレーンの遺伝子や、マッドリブ、ディラ、ドゥームからの伝統を受け継ぎ、前世紀の最も輝けるブラック・アメリカン・ミュージックを要約、洗練、再発明した作品でありながら、先人たちが想像さえできなかった領域へと導いている。日本盤CDには歌詞・対訳および解説が封入され、ボーナス・トラックを追加収録。
発売・販売元 提供資料(2019/04/18)
革新性のすべてを燃えたぎるイマジネーションと共に解き放つ永遠の炎--ある種の創造主としてシーンに堂々と君臨するフライング・ロータスが28曲を収録した驚異の大作を発表!『Flamagra』の熱はどこまで波及していくのだろう?
グラミー賞にノミネートされた圧倒的な前作『You're Dead!』(2014年)がもう5年も前のことだとは。その後はケンドリック・ラマー『To Pimp A Butterfly』(2015年)などに参加しつつ、サンダンス映画祭でプレミア上映された「Kuso」(2018年)の初監督でも話題をさらったりする一方、主宰レーベルのブレインフィーダーではカマシ・ワシントンの超大作『The Epic』(2015年)やサンダーキャットの人気作『Drunk』(2017年)を筆頭とする革新的な作品群によってシーンを大いに賑わせてきたフライング・ロータスが、文字通り満を持してのニュー・アルバム『Flamagra』をリリースした。
資料によると今回は〈ある丘の上に鎮座している永遠の炎〉がテーマだそうで、アルバム・タイトルもそこに由来するものだという。客演陣も呑み込むような構成だった前作に対して今回は比較的ゲスト・アーティストの扱いが真っ当(?)というか、"More"に滑らかなフロウで忍び込むアンダーソン・パークをはじめ、"Burning Down The House"にはお馴染みの変態歌唱を響かせるジョージ・クリントン、"Spontaneous"で浮遊するリトル・ドラゴン、"Yellow Belly"にアーシーな息吹を注ぐティエラ・ワック、"Black Balloons Reprise"にて自作とは違うスピットを聴かせるデンゼル・カリー、熱を帯びていく"Fire Is Coming"で朗々とナレーションするデヴィッド・リンチ、さらにはシャバズ・パレセズ、サンダーキャット、トロ・イ・モワ、そしてソランジュ……といった界隈のビッグネームたちがそれぞれ表情の見える形で登場してくる。言うまでもなく活動当初からのフライング・ロータスはインスト曲を表現のメインにしてきたわけだが、今回は1分半ほどで出し入れされる合間のインスト曲が流れ上インタールードのように機能する仕掛けにもなっていて、ある種のヴォーカル/ソング・オリエンテッドな作風を強調してきたとも言える。
これが主役にとっての変節なのか、今作が行きがかり上そうなっているのかは不明ながら、人懐っこく切り替わるインスト群のほうに本来的な彼の魅力が感じられる気がしなくもない。よく考えると昔より楽曲はメチャクチャ明快になっているのに語られ方がどんどん大仰になっていくのもおもしろいところだが、今後も飽くなき変態を続けていくであろう天才にとって今作がどんな意味合いを持つのか、その変化を楽しみに見守っていきたくなるような快作であることは確かだ。
bounce (C)香椎恵
タワーレコード(vol.427(2019年5月25日発行号)掲載)