ファジル・サイが6か月以上の作曲期間を費やした新作、≪トロイ・ソナタ≫は10のセクションからなり演奏時間が40分を超える超大作。サイが放つ超絶技巧と現代のピアノが持つ楽器の特性を最大限に活かし、トロイの伝説のドラマティックな要素を表現した。この他、トルコの創設者ともいえるアタテュルクにまつわる4つの逸話を題材とした、≪動く邸宅≫、トルコ、アルメニア、アゼルバイジャンおよびイランでよく知られている民謡を基にした≪金髪の少女≫、トルコ古典音楽の旋法のひとつ<ヒジャーズ・マカーム>を用いてオールド・イスタンブールの多文化で懐かしい世界を描写した、≪イスタンブールの冬の朝≫を収録。 (C)RS
JMD(2019/05/14)
ファジル・サイの音楽を特徴づけるモチーフ、メロディと複合リズムはその基本的な性格や構造がいくつもの自作品の中で共有されており、彼の創造のドメインを星座のように浮かび上がらせる。その音楽の色彩は繊細であり、律動は強固である。一方、それはファジル・サイという人の個性を通じてあらためて聴こえ出したトルコ及びその周辺地域の音楽のケーデンスと言えそうな代物である。今回本人の演奏で録音された《トロイ・ソナタ》でも、メソポタミア交響曲に現れたモチーフと響き合い、弦楽四重奏など多くの作品にも援用されている複合リズムがサイという固有の領域を響かせる。
intoxicate (C)高見一樹
タワーレコード(vol.140(2019年6月10日発行号)掲載)