ジャズ、クラシック、映画音楽、ラテン…と各方面、ジャンルを越えて、コンポーザーおよび、アレンジャーとして実力を発揮するカルロス・フランツェティによる新作。昨今は自らのコンポジションとアレンジで、オーケストラとの演奏も多いアーティストですが、本作では、クラシック的なバックボーンとジャズを掛け合わせたトリオでの作品になりました。ベースのデイヴィッド・フィンクとは、30年近くの付き合いながら、ドラマーのエリオット・ジグムンドとは初共演。つまり、このトリオでの作品は、セッション的なものでもあります。しかし、もともと、『You must Believe in Spring』というタイトルの作品もリリースしたこともあるフランツェッティ。エヴァンスや、マイルス縁の楽曲も演奏し、ジャズ・スタンダードや、エリントン楽曲などでもすばらしい演奏をみせており、エヴァンスの晩年のドラマーであるエリオット・ジグムンドとの共演には相性の良さがあります。また初顔合わせならではのフレッシュさもあります。楽曲はモリコーネや、フランシス・レイ、またもともと『オズの魔法使い』の楽曲である"オーバー・ザ・レインボウ"といった映画音楽の楽曲、"ダニー・ボーイ"のようなトラッド・ソング、またフランツェッティが敬愛するクレア・フィッシャーに捧げた軽快なボサ・ナンバーをはじめとしたオリジナルなど、多彩。しかし、作品として響くのは、アレンジャーとして活躍するアーティストのセンスある一貫とした美意識あるピアノ・トリオ音楽。特に、トラッド・ソング独特の牧歌的なムードが漂うイントロのソロから軽快な4ビートのミディアム・スウィングの演奏をトリオでみせて行く"ダニー・ボーイ"の演奏など絶品です。映画音楽を手がけるアーティストならではか、楽曲演奏はヴィジュアルを喚起する雰囲気もあり、ラスト2曲をしっとりとソロで聴かせるところにも演出の妙を感じさせます。アルゼンチンをルーツに、様々な顔をもつアーティストの世界観があふれるピアノ・トリオ好演奏です。
発売・販売元 提供資料(2018/12/14)
1948年アルゼンチン生まれ。映画音楽など幅広く活躍してきた才人だ。ジュリアード音楽院に学び、米国音楽界で活躍、いわゆる神童系のピアニストで母国の系統の様々な音楽の大物。映画音楽でも活躍、そのカルロスがジャズのど真ん中直球のアルバムを贈ってくれた。僕は何年後かに隠れ名盤入りする作品と見た。全曲がハイレベルで、様々な曲調、テンポ、すべての面で超一流を証明している。上手い、味もあります。ジャズ歴の長い方にもお薦め。特に(3)(4)(5)と"泣かせのトリオ"が迫ってきます。忙しい時間が多い方に、このゆっくりと流れる時が寛ぎを運びます。そして、締めに(10)が登場。
intoxicate (C)瀧口秀之
タワーレコード(vol.138(2019年2月10日発行号)掲載)