カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、ガル・コスタらとともにトロピカリア・ムーヴメントを代表する音楽家として、いまもブラジルだけでなく世界中の音楽家に影響を与え続ける鬼才トン・ゼー。本作はそんなトン・ゼーの鬼才っぷりが余すことなく発揮された1976年にリリースされたコンセプト・アルバムである。タイトルは日本語に翻訳すると「サンバを学ぶ」。かつて「サンバ学習」なる邦題でCDがリリースされていたこともあった作品である。
その名の通りブラジル音楽のベースでありブラジル人であれば鼓動のように脈打っているサンバを、トン・ゼーが解体し再構築したのだが、そこはさすがにトン・ゼー。一般的に思い浮かぶサンバの熱狂はそこになく、削ぎ落されたミニマムなサウンドとコラージュのように突如挿入されるホーンズ、かと思えば白昼夢を見ているかのような奇妙なまでにほのぼのした弾き語り…と気づけばトン・ゼーの世界にひきこまれている。
90年代にはトーキングヘッズのデヴィッド・バーンが本作を再発見し魅了され、のちに彼のレーベルからリリースされたトン・ゼーのコンピレーションにも本作から数曲を収録。それがきっかけで本作、そしてトン・ゼーの世界的な名声も高まり、ローリングストーン誌が選ぶ「もっとも偉大なブラジリアン・アルバム」のベスト100のリストに本作も常にノミネートされている。
発売・販売元 提供資料(2021/06/11)
トロピカーリアの面々の中で一際異彩を放つトン・ゼー。齢80を超えた今もコンスタントに作品を発表しているが、どの時代の音を聴いてもトン・ゼーとしか言いようのないユニークさ、それは変わらない。1stと2ndも再発したUKのMr.Bongoから届いた76年の名作、その名も『サンバ学習』、この学習シリーズ? は00年代に新たにパゴーヂとボッサの2タイトルが追加されているが、どれをどう聴いてもトン・ゼーとしか言いようがなく、本作も例に漏れず。そこからサンバを読み解く、つまり学習するのは寧ろ我々なのか? 或いは難しい事考えずとにかく楽しいトン・ゼー節と戯れるのも一興。
intoxicate (C)片切真吾
タワーレコード(vol.139(2019年4月10日発行号)掲載)