風景を変える、全てをセピア色に染めていくノスタルジック・ミュージック。
現代の吟遊詩人ことザック・コンドンによるプロジェクト、ベイルートの3年振り新作。NY、ベルリン、南イタリアと、さまざまな地を経て完成させた今作。南イタリアの城塞都市「ガリポリ」にてであったブラスバンドの行進からインスパイアを得て書き上げられたタイトル曲は、目を閉じればありありとその光景が浮かぶ。アルバム通してヨーロッパのアンティークな風合いを感じられる温かくも物悲しい音色、不思議なノスタルジック・ミュージック。
(C)新宿店:寺本 将己
タワーレコード(2019/02/15)
インディーロックとワールドミュージックを融合させたサウンドで多くの音楽ファンから絶大なる支持を集める天才シンガー・ソングライター、ザック・コンドン率いる大所帯バンド、ベイルートが前作『No No No』(2015年作)以来となる5作目を〈4AD〉よりリリース。トランペットやアコーディオン、チェロやウクレレといった様々な楽器を組み合わせて奏でる華やかな音色と、ザック・コンドンの優美なヴォーカルは、まさに古のヨーロッパの街並みすら想像させる。
実に3年振りとなる本作は、デビュー作『The Gulag Orkestar』(2006年作)と2作目『The Flying Club Cup』(2007年作)の作曲時と同じオルガンを使用しニューヨークとベルリン、そして南イタリアのプーリア州の奥田舎に潜むスタジオ施設でレコーディングされた。「自分の今までの古い作品と新しい作品が融合したカタルシスのように感じられ、昔、僕が体験していたような、体で直に感じる音楽の喜びが戻ってきた」とザック自身も語る通り、静かな環境での制作が新たなアイデンティティーを生み出しつつも、これまでのキャリアで築き上げてきたベイルート・サウンドの核となる情緒豊かな作風は残した作品となっている。
発売・販売元 提供資料(2019/01/10)
ザック・コンドン率いるベイルートの3年ぶりの新作。城塞都市に触発されたという表題曲をはじめ、随所で古き良きヨーロッパ風の異国情緒が漂っているのは、ドイツやイタリアのスタジオを拠点に作られたからだろう。ザックの柔和な歌声を包むように祝祭的な雰囲気を醸すブラスやオルガンと、仄かな哀愁を帯びたアコーディオンやチェロの響きが交じり合った、ノスタルジックなのに眩いほど鮮烈なサウンドが美しい。
bounce (C)北爪啓之
タワーレコード(vol.424(2019年2月25日発行号)掲載)