アカデミックなバックグラウンドを出自としながら、ポップミュージックから現代美術まで様々なシーンに音楽で携わる作曲家、 網守将平。2年ぶりとなる新作は、前作『SONASILE』リリース以降、2作のサウンドインスタレーションの展示、現代音楽シーンでのオーケストラ作品の発表、NHK Eテレ『ムジカ・ピッコリーノ』への音楽制作での参加など、幅広い活動の合間を縫って制作された。"音楽そのものの抽象性"へ様々な角度からアプローチし"音楽はまだ存在しない≒空想音楽≒パタミュージック"という大胆な仮定がコンセプトとなっているという今作は、エレクトロニカテイストの強かった前作に比べ、自身のヴォーカルとバンドサウンドによるストレートなポップソング、弦楽四重奏を取り入れたシネマティックな楽曲、さらに無限音階や位相変換を用いた実験音楽が方向性を持たないまま並べられ、統一感が意図的に排除された挑戦的なアルバムとなっている。昨年トーキョーアーツアンドスペースで行われた現代美術展『不純物と免疫』のタイアップソングである「デカダン・ユートピア」も収録。 (C)RS
JMD(2018/10/13)
現代音楽作曲家:網守将平の2ndアルバムは極めてポップで上質な音に満ちている。近年ではEテレ「ムジカ・ピッコリーノ」の音楽制作に携わるなど、現代音楽の世界に留まらずその活動領域を拡大し注目されている作曲家なだけに、その作風には様々な期待が寄せられるだろう。空想音楽というコンセプトの下に全11曲が収められた本作は作風・曲調という言葉では括れない"多岐"性に満ちていた。80年代テクノポップを匂わせるかと思えば、甘くも美しいストリングスが顔を出す。耳に残るメロディとちょっとシリアスな電子音響が共存し、ポップさの皮の下に何かがある。そんな深読みをしたくなる楽しい音楽だ。
intoxicate (C)板谷祐輝
タワーレコード(vol.137(2018年12月10日発行号)掲載)
2年ぶりのアルバムは、AOR調のアンサンブルと自身のヴォーカルによるポップソング、ストリングスをフィーチャーしたロマンティックなインスト、エクスペリメンタルな電子音楽といったスタイルも質感も異なる楽曲が混在する作品となった。それらの要素を1曲のなかに投げ込んだような"デカダン・ユートピア"がひときわ鮮烈な印象を残す。バラバラでいて、全編に通底するノーブルな佇まいがこの作家ならでは。
bounce (C)澤田大輔
タワーレコード(vol.421(2018年11月25日発行号)掲載)