『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』
ドイツ・ブレーメン。女性ファッションデザイナーのペトラは、二度の結婚に失敗していて、最初の夫との間には娘がいた。今の彼女は、アシスタントのマレーネをしもべのように扱いながら、アトリエ兼アパルトマンの部屋で生活している。ある日、友人のシドニーが部屋を訪れ、彼女に若い女性カーリンを紹介する。ペトラは美しいカーリンに心奪われ、彼女と同棲を始めるが、カーリンは自堕落で奔放だった。やがてカーリンがペトラを見限り、夫のもとへと戻ってしまうと、そのショックからペトラは常軌を逸してしまう…。
『不安は魂を食いつくす』
ドイツ・ミュンヘン。60歳を過ぎた初老の女性エミは掃除婦として働いていたが、ある夜、雨宿りに入ったバーでモロッコ人の自動車工アリに出会う。二人はダンスをして、語り合い、アリはエミの家に行くと、ひと晩を共にする。二人は一緒に暮らすが、アラブ系外国人に対する偏見は強く、アパートの隣人や同僚、家族から冷たい態度を取られ、理解を得られない。それでも二人は結婚し、愛を育んでゆく。やがて周囲から受け入れられるようになるが、エミとアリの間には溝ができ、アリは家を出て、若い女の部屋へ向かう。エミがアリを探して仕事場に行くと、アリの前で同僚たちはエミをからかい、笑うのだった……。

『シナのルーレット』
ゲアハートは週末をひかえ、妻子に仕事があって一緒に過ごせないと言うと、家を出る。彼は家族に嘘をついて愛人のイレーネと別荘へ向かう。だが豪奢な別荘に着いて二人が見たのは、妻アリアーネと秘書コルベが床で戯れている姿だった。彼らは互いに紹介し、何食わぬ顔で過ごす。そこに足の不自由な娘アンジェラと家庭教師のトラウニッツも到着する。すべてを見ている雇用人の家政婦カーストとその息子ガブリエルは、この一家を軽蔑していた。そして両親らを憎む娘アンジェラは、一堂に会した面々に向かってゲームを仕掛ける。それは各々の心に潜む不安や怖れ、憎しみを露わにするものだった。その果てにアリアーネは遂にトラウニッツを撃ってしまう……。