KUNIYUKIの'17年リリース、HIGH WANTタイトルがリプレス!!
2002年に今は亡きシスコが運営していたレーベルLife Lineからリリースされたクニユキのデビューシングル「kids breath」から遡ること12年、1990年にミュージシャンdirk ivensが運営する知る人ぞ知るベルギーのエレクトリックボディーミュージックのレーベルbody recordsからtomoyuki murastigeとクニユキのユニットDRP(=Deutsches Reichspatent)としてアルバム『Electro brain 586』でキャリアをスタートしていたことを知る人は多く無いかもしれない(実はこの名義で2015年にニューアルバムがリリースされている)。
2014年にリリースされたmule musiqのレーベルコンピレーション『I'm starting to feel ok』の10周年記念盤に提供された「new wave project #2」から派生した、クニユキの音楽的ルーツであるニューウェーブ、DAFに代表されるジャーマンエレクトロ、front 242を始めとするエレクトリックボディーミュージック、そしてインダストリアル等を彼なりに消化し自身のプロダクションに反映させた今回の『ニュウェーヴ・プロジェクト』。
このアルバムに収録されている楽曲は、そういった雰囲気の音楽をモダンなエレクトリックミュージックに落とし込んだという分かりやすい感じとは少し違った、彼なりの現代版モダン・エレクトリック・ニューウェーヴ集と言った方がしっくり来るだろう。ローランド・ジュピター8、ジュノ60、コーグMS20、テープエコーマシーン等のヴィンテージシンセから現代のローランド・アイラ、世界に二台しか無いと言われているドープ・リアルのモジュラーシンセを駆使し、また、すべての音が楽器、コンピューター等を問わずクニユキ自身によって生み出されて来たこれまでの作品とは違い、80年代の音源をサンプリングしている所も今作の聴きどころの一つである。
80年代の実験的な現代音楽を連想させる「steam」でアルバムは幕を明け、ダークでミニマルなエレクトリックハウス「cycle」、このアルバムが制作されるきっかけとなった先行シングル「newwave project#2」はアフロプリミティブなモダンディープハウスの傑作、ジャーマンエレクトロの影響が色濃く出たコールドファンク「blue neon」、エレクトリックボディーミュージックとハウスが高次元でミックスされたフロアキラー「mind madness」、ジャーマンプログレッシブなエレクトリックフュージョン「opposite meaning」、インダストリアルでエクスペリメンタルな「puzzle」、クニユキ流メタルダンスなエレクトリックハウス「newwave project#11」「#9」、前衛的なジャズとインダストリアルがミックスされたかの様な「body signal」、エレクトリックボディーミュージックmeetsジャーマンプログレッシブの「machine jungle」、80'sエレクトリックジャズフュージョンのハウスミックスなクラブトラック「newwave project#7」で幕を閉じる。
これまでのメランコリックな作風から一変した今作は、彼の最もカッティングエッジな部分にフォーカスしたアルバムであり、彼の音楽的原点に回帰したターニングポイントと言える重要作品に仕上がった大作と言っても過言では無いだろう。
発売・販売元 提供資料(2023/05/19)
国内外の名門レーベルからリリースし、欧州でのライヴ活動も行うヴェテランの約4年ぶりの新作は、ディープ・ハウスを軸に、自身のルーツにあたるニューウェイヴやボディー・ミュージックを掛け合わせた内容に。強靭なボトムと躍動するグルーヴでジワジワ上げていく"newwave project #2"や、カオス渦巻くダークなアシッド・ハウス"mind madness"など、中毒性あるトラックがズラリ。熟練の技と懐の深さに脱帽です!
bounce (C)郡司和歌
タワーレコード(vol.404(2017年6月25日発行号)掲載)