現代ジャズ・シーン屈指のベーシスト、マット・ペンマンのリーダー作!
本作は、そんなペンマンのミュージシャンとしての蓄積と、日々の経験を結実させた現時点での集大成的作品!今回集ったのは、マーク・ターナー、アーロン・パークス、オベド・カルヴェール。また、ニア・フェルダーが2曲、ウィル・ヴィンソンとホジェリオ・ボッカートが1曲ゲスト参加。このメンバーは誰もが認める超トップ・ミュージシャンであるわけですが、皆がマット・ペンマンとレギュラーで活動するメンバー。そのメンバーに関してペンマンは、「楽曲は、音楽的な会話の主題を指示しながら、新しいアングルや予期しないリアクションも誘発出来たらと思って、作曲したのだけど、実際、参加した全てのミュージシャンは、演奏をごく自然に共有する意志と共に、自分自身の視点をもっていて強力な意見ももっている。だからこのメンバーと録音したかったんだ。それによって、音楽的なディスカッションが、とても豊かで幅広いものを生みだすことも証明すると思う」とも語っています。録音は、2017年3月の24.25日の2日、及び7月12日の3日間、ブルックリンのスタジオにて。収録した9曲の中には、様々な音楽の雰囲気/ムード、空間がある中で、あるものは、特定のミュージシャンを思い描いたものであり、あるものは、アメリカでの文化や政治情勢へのレスポンスとして描いたとのこと。ペンマン曰く、「この作品は全般的にいえば、ニュージーランドという国に生まれ、よそ者でありながら、人生の半分以上をアメリカで暮らしているものの目を通して、アメリカという国の中にある喜びや困惑、批判や、祝祭というものを表しているともいえる」とのこと。そうした意味で、本作は、ブランクの10年のみならず、1アーティストの40年に及ぶ経験がこめられているともいえます。言うまでもなく、この強力メンバーが集結し、ペンマンの確固たる意志も反映された作品。どの曲も、ペンマンが構想した楽曲を背景にしながら、センスを感じさせる各人のソロは、一本筋が入り、ドラマティックな展開も見せていきます。近年はECMで作品を出すアーロン・パークスがピアノとローズ、オルガン、ヴィブラフォンを楽曲の世界に合わせて巧みに使い分けた演奏ほか、ダイナミックなソロと、ルーツであるトリスターノ的なフレージングを融合させるマーク・ターナーの演奏にも、ペンマンのディレクションあっての、真骨頂が引き出されています。一方そのターナーの6曲の演奏に切り込んだ、M3のウィル・ヴィンソンのソプラノ、ロック/ジャズ、双方を自由に横断しながらアーロン・パークスと共に洗練されたサウンドを構築するニア・フェルダーのギターがフィーチャーされたM6も聴きものです。テンポ/ムード/色彩感、各曲には、それぞれの個性が息づく9つのストーリー。最高のミュージシャンが集った演奏の素晴らしさと共に、不透明で不安も隠せない21世紀という時代がペンマンの楽曲を元に、織り込まれて滲みます。話題作であり、今という時代が生んだ問題作ともいえる大作です。
発売・販売元 提供資料(2018/07/10)
ジョシュア・レッドマンらとのユニット、ジェイムス・ファームに参加。現代ジャズシーン屈指のベーシスト、マット・ペンマンのリーダー作が、名門サニーサイドから登場。マーク・ターナー、アーロン・パークスなど豪華メンバーが参加。ニューヨークシーンのスターたちの顔ぶれは見ただけでも興奮もの! ピアノ、ローズ等を巧みに使い分けるアーロン・パークスの表現の豊かさ、マーク・ターナーのダイナミックなソロなど、ペンマンのディレクションによっで縦横無尽に暴れまわる様は圧巻です。洗練されながらも、凄腕たちの余裕の遊び心が垣間見える強力作品。
intoxicate (C)栗原隆行
タワーレコード(vol.135(2018年8月20日発行号)掲載)