ワルター・ゲール(1903~1960)はアルノルト・シェーンベルクの弟子として、とくに同時代音楽を好んでいましたが、指揮者としては数世紀に及ぶクラシック音楽の演奏に専心していました。このCDは、ネーデルラント・フィルハーモニー管弦楽団、及び合唱団との1955年の演奏会録音で、大成功を収めた演奏のドキュメントです。ゲールはベルリンに生まれました。しかし、彼はユダヤ人だったため、ベルリン放送局での仕事を追われた1932年以降は、ドイツ以外の働き場所を探さなければなりませんでした。彼はイギリス・グラモフォン社(旧EMI、現ワーナー・クラシックス)の音楽監督に招かれ、ロンドンに移住しました。その間、彼はロンドン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮して、ビゼーの交響曲ハ長調の世界初録音を行っています(註:ビゼーの交響曲は1855年に作曲されながら、80年もの間演奏されることなく、ようやく1935年2月26日にワインガルトナー指揮により初演されました。ゲールによる世界初録音は1937年11月26日)。彼はヨーロッパ中のオーケストラから客演を強く望まれた指揮者でした。(メーカー・インフォより翻訳)
タワーレコード(2019/12/09)
ワルター・ゲールは戦前は旧EMIの音楽監督として、同レーベルの協奏曲録音の指揮者を担当し、戦後は通信販売のコンサートホールの指揮者としてヴィヴァルディからヴァレーズまで、数多くのクラシックの名曲を録音しました。とくにベートーヴェンの交響曲の録音は有名で、第2、3、7番以外の6曲を録音しています。
ワルター・ゲールのベートーヴェン/交響曲録音(カッコ内はレーベル名)
第1番 フランクフルト歌劇場管弦楽団(Concert Hall / Audio Fidelity)ステレオ
第4番 フランクフルト歌劇場管弦楽団(Audio Fidelity)ステレオ
第5番 フランクフルト放送交響楽団 (Concert Hall)モノラル
第5番 ロンドン交響楽団 1958年7月25日(Concert Hall)ステレオ
第6番 ネーデルラント・フィルハーモニー管弦楽団(Concert Hall)モノラル
第8番 フランクフルト放送交響楽団(Concert Hall)ステレオ
第9番 フランクフルト放送交響楽団(Concert Hall)モノラル*
第9番 ネーデルラント・フィルハーモニー管弦楽団 1955年(当録音)ステレオ**
*歌手はギーベル(S) ホフマン(A) クレプス(T) オレンドルフ(Bs)
**歌手はベイステル(S) プリッチャード(A) ガレン(T) ヴォロフスキ(Bs)
これらの録音に聴く彼のベートーヴェンは、ストレートかつダイナミックな歩みの中に激しい情熱の奔流を感じさせるもので、シェルヘンやレイボヴィッツに通じる表現主義的な演奏内容をもっています。今回CD化された1955年ステレオ録音の「第九」は、ゲールにとって二度目の「第九」録音と思われ、同様の演奏傾向を示しています。
演奏時間は下記の通り。
第1楽章 14分27秒
第2楽章 11分10秒
第3楽章 17分35秒
第4楽章 24分39秒
トータル 67分53秒
第1楽章と第2楽章は、速めのテンポと高いテンションにより楽曲をキリリと造形しつつ、強烈なダイナミズムの対比、迸るような旋律の歌、楽器を重ねるときのシンフォニックな迫力など、作品の激しい内容を、創造のエネルギーを、熱く聴き手に語りかけてきます。第3楽章は一転して天上の世界の表現。テンポはむしろ遅めで、清らかなメロディはテヌートでしっかりと歌われ、透明なハーモニーにより楽器間の対話をくっきりと見渡すことができます。第4楽章では、開始部の厳粛な雰囲気から主要テーマが登場するまでの素晴らしい高揚感、バスのソロを導くオーケストラの激しい緊迫感、喜びの歌を歌う合唱の晴れやかさ、テンポを踏みしめた二重フーガの壮麗な立体感、と素晴らしい場面が続きます。そしてコーダでの圧倒的な色彩と歓喜の爆発!「第九」好きの方には見逃すことのできない、個性的名演の登場と言えるでしょう。 (C)板倉重雄
タワーレコード(2019/12/09)
通好みのユダヤ系指揮者ゲールによる第九!
ドイツ出身のユダヤ系指揮者ワルター・ゲールは、シェーンベルクの門下で学んだイギリスの現代音楽作曲家アレクサンダー・ゲールの父としても知られています。
ユニバーサル・ミュージック/IMS
発売・販売元 提供資料(2018/08/17)