現代アルゼンチン・フォルクローレ・シーンを名実ともにリードするスーパーグループ、アカ・セカ・トリオによる、実に9年ぶりの新スタジオアルバムが完成。同国の伝統的な歌のエッセンスに、ジャズ・ロック・クラシック等さまざまなサウンドを融合させた洒脱なサウンドは、数多くのフォロワーを生み出し続けるシーンの雛形であり代表的存在。
優しく伸びのある歌声、正統派ギタリストでもあるフアン・キンテーロは、当グループのフロントマンであると同時に、現代アルゼンチン音楽を象徴する声といえる存在。静寂さえも表現する希有なピアノ奏者であり、サウンド面の中心人物アンドレス・ベエウサエルトは、南米発の21世紀チェンバー・ミュージックを牽引するキーパーソンでもある。
そしてマリアーノ・カンテーロも、アルゼンチン各地のリズムを武器に様々なプロジェクトに参加する、この世代の第一人者といえるパーカッション奏者。この3人が奏でる洒脱で壮大なスケール観を持ったアンサンブル、澄んだ唄声のハーモニーは、心が震えるほど美しい。
ここ日本でも過去作やベストアルバムの国内盤CDがリリースされ、またメンバーそれぞれの名義による来日が実現するなど、このジャンルにおけるトップクラスの人気・実力を誇ってきたが、2016年にグループとして初来日を果たしたことをきっかけに評価が再燃。アンドレス・ベエウサエルトは2015、17年にもソロ名義で来日し、東京録音のアルバム『アンドレス・ベエウサエルト』(NKCD-1015)をリリース。フアン・キンテーロは2017年にブラジルを代表するピアノ奏者アンドレ・メマーリとのデュオで再来日、カルロス・アギーレを加えたトリオ作品『セルペンティーナ』(NKCD-1017)を同年にリリース。それぞれがアルゼンチン音楽の枠さえ超越する新しいモデルを提示、南米シーンにおける最注目の音楽家としての評価を確立。複数のプロジェクトに関わるソロワークも脚光を浴びるなか、世界中のファンが待望してきた新作は、ライブ演奏によってすでに披露されてきたレパートリーを多く含む充実の内容。高度なアンサンブルと演奏技術とともに、この国に脈々と受け継がれる歌の力を結晶化させたような本作は、当グループがシーンのトップランナーであることを再び強く印象づける。
アルゼンチン、ひいては南米音楽に新しい王道を築き上げたことをしなやかに証明してみせた。
発売・販売元 提供資料(2018/04/18)
フロントマンのフアン・キンテーロは、2017年、現代ブラジルの最高峰のピアニスト、アンドレ・メマーリとのデュオで来日。そして、同じくアンドレ・メマーリと、カルロス・アギーレとのトリオによる、現代南米音楽の金字塔とも言える傑作アルバムを発表。ピアニストのアンドレス・ベエウサエルトもまた、現代の南米器楽系シーンをリードする存在として、素晴らしいソロ作を数々発表。そんな2人を擁するスーパー・グループの久々のスタジオ録音作は、独自の映像喚起的なサウンドを高度な演奏技術で表現しつつ、心に響く〈歌〉の力にフォーカス。近年高まる評価と期待を、良い意味で裏切ってくれた。
intoxicate (C)栗原隆行
タワーレコード(vol.133(2018年4月20日発行号)掲載)