I Was Born To Dance With You/Indigo

本格的な活動開始から15周年を迎えるavengers in sci-fiが自主レーベルScience Actionを設立。 便宜上レーベルと呼んではいるもののそのコンセプトは"クリエイティブ・ベース"とも呼ぶべきもので、バンド作品のリリースはもちろん外部アーティストや映像作品への楽曲提供、マーチャンダイズやアートワークのデザインに及ぶまで音楽活動にまつわるあらゆるオファーをScience Action名義で請け負っていくという。その最初の一歩と言わんばかりにScience Actionのレーベル部門(とあえて言っておこう)からの第一弾リリースとなる今作ではジャケットアートワークと『Indigo』のレコーディング/ミックスをメンバーの木幡自身が手がけ、Science Actionの"クリエイティブ・ベース"としての片鱗を示している。(さらにはScience Actionのロゴと今年度のavengers in sci-fiのマーチャンダイズも木幡のデザインによるもの。)一方サウンドはオルタナ/グランジといった90'sロックの再解釈が大きなテーマであったアルバム「Dune」から打って変わって大きく舵を切った。今作にインスピレーションを与えているのはMarshall Jeffersonや808state、A Guy Called Geraldといった往年のアシッドハウス期のダンスミュージック、はたまたそれらの遺伝子を受け継いだAphex Twin やThe Chemical Brothers、さらには電気グルーヴで、特に『I Was Born To Dance WithYou』は電気グルーヴのavengers in sci-fi的解釈というのがメンバーの見解である。前述のレジェンド達も愛用したアシッドハウスを象徴する名器ローランドTB-303をはじめTR-909、コルグMS-20、モーグMinitaurといったアナログな機材のサウンドが打ち込みのビートの上にこれでもかと詰め込まれたサウンドは、15年のバンドの活動歴において最もエレクトロニック/ダンスに接近した内容なのは間違いないが、アメリカの西部や南部が浮かんできそうなロードムービー的な世界観とアナログシンセを融合し、ゴスペルのサンプリングも使用した『Indigo』が所謂"ダンスミュージック"と一線を画しているのはいうに及ばず、ハウス的な要素をフィーチャーしつつも瞬間的に沸点に到達するような瞬発力が"ダンスミュージックの服を着たパンクロック"とも言うべき『I Was Born To Dance With You』からもロックとエレクトロニックミュージックを独特の感性で融合してきたavengers in sci-fiの挑戦が15年目も変わらず継続中である事が感じられる。