2011年に発表した『The Good Feeling』が、Best Large Jazz EnsembleAlbum 部門において第54回グラミー賞を受賞したクリスチャン・マクブライドの待望のビッグ・バンド作品!冒頭は、95年に発表したクリスチャン自身のデビュー作/タイトル曲から。この曲は、ジェームス・ブラウン~JB's あたりがいかにも演奏しそうなスタイルとタイトルのジャズ・インスト・チューン。実際、ジェームス・ブラウンのフリークともいえるほどの大ファンであるクリスチャン。このオリジナルは、その愛情の深さを示してあまりありますが、グルーヴしまくるファンクなリズムとホーンズが無条件にリスナーをアッパーな気分にさせる演奏でツカミも最高です。かと思えば、2曲目は尊敬してやまないフレディ・ハバードが、アート・ブレイキーのグループに在籍した時に発表した楽曲で、モダン・ジャズの粋を表現。またここで注目は、新メンバーとして参加したトランペッター、フレディ・ヘンドリックスの存在でもあります。ヘンドリックスは、Mack Avenue All Stars のメンバーにも抜擢され、クリスチャン・マクブライドが新たに統率するそのバンドでも素晴らしい演奏を聴かせてくれましたが、ここでもハイノートをヒットさせるキレのいい演奏でソロを披露。かつてからのバンド・メンバーである、テナーのロン・ブレイクやピアノのザヴィア・デイヴィスといった面々にもエネルギーを与えるような熱い演奏を見せてくれています。一方、今をときめくマリア・シュナイダーからも影響を受け、そのリスペクトを形にしたのが、M4の"I thought about you"。他方"Full House"がウェス・モンゴメリーへのリスペクトをしているのは、明らかで、マッコイ・タイナーのモーダルなサウンドが炸裂する"Sahara"にチック・コリアへのオマージュをささげているのも、興味深いところでもあります。今回も、公私共々のパートナー、メリッサ・ウォーカーが2曲で参加。ジャヴァンによるブラジリアンなナンバー、サミー・デイヴィス・Jr. の歌唱でも知られる"Mr. Boj angl es"でシルキーな歌声を聴かせてくれ、作品に華を添えてくれています。ちなみに、クリスチャン・マクブライドのオリジナルはオープニングのみでなく、3曲ともかつて自分のアルバムで演奏した楽曲をチョイス。その理由は、自分はまだアレンジャーとして発展途上だから、以前の楽曲を、描き変え、ヴァージョンを上げていきたかった、とのことですが、ベーシストが聴いたら、変態的と皆が口をそろえる10曲目は楽曲の繊細さを活かすために、ベーシストが嫌うキーBをあえて使ってのアレンジとのこと。
発売・販売元 提供資料(2017/08/08)
ジョン・ビーズリーとは対局的なビッグバンドとして、優れて伝統的な存在感を増してきたマクブライド。若い世代への音楽オルガナイザー的な行動も近年は目立ってきた。かつて、レイ・ブラウンもそうした動きをした時代もあったが、マクブライドはベース奏者としての実力の発揮と共に、伝統に根ざしながらも新しい音楽的な要素を採り入れてきた。本作は純ジャズ・ファンへの彼からの答えだろう。題材、採り上げ方も現代は様々なビッグバンドが存在し、初めにバンドの形態ありきではなくて、表現したいことに対応しながら形態を変えるミュージシャンも多い。ジャズ史が詰まった丹念なつくりだ。
intoxicate (C)瀧口秀之
タワーレコード(vol.130(2017年9月25日発行号)掲載)