意外に思われるかもしれませんが、カイルベルトはマーラー演奏にも熱心でした。今まで集成されることのなかった名演が楽しめます。
第1番「巨人」
当時の手兵、シュターツカペレ・ドレスデンを指揮した苛烈な演奏。相当なスピードで突っ走ります。若きマーラーの未熟さえも魅力に変えてしまうのがカイルベルトの手腕と言えましょう。
第4番
この演奏は、見事なステレオ収録。カイルベルトが重用したアグネス・ギーベルの艶やかな歌唱を得て聴きどころ満載です。徒に不気味さを強調することなく、素朴さを遺した好感を持てるマーラー像。推測するにカイルベルトはブルックナーとマーラーを同一の位置に考えていたのではないでしょうか?(1/2)
ミューズ貿易
発売・販売元 提供資料(2017/07/26)
第8番「一千人の交響曲」
1960年のウィーン芸術週間。その中核は、生誕100年を迎えるマーラーとベートーヴェン。マーラー直弟子のクレンペラーは一切マーラーを指揮せず、ロンドンからフィルハーモニア管を率いてベートーヴェン・ツィクルスを担当しました。その初日は5月29日で、同日昼のマチネーは、かの有名な「ブルーノ・ワルター+ウィーンフィル告別演奏会」でした。他のマーラー作品は、第2番「復活」をクリップス指揮ウィーン響、「大地の歌」をカラヤン指揮ウィーンフィル(この組合せのレコードなし!)が演奏。何ともファン垂涎の顔触れ。そして演奏が稀で、かつ至難な「一千人の交響曲」を担当したのが、カイルベルト指揮ウィーン響でした。ワーグナーをはじめとする大規模ロマン音楽の名解釈者として知られるカイルベルトは、ワーグナーではしばしば熱してくるとグイグイとオーケストラを煽るような面もありましたが、この「一千人」は正に壮大な叙事詩とも言える大河の流れのような悠然たる演奏で、心が刺々しくなるような緊張感は皆無。安心して身を任せられる、母なる大地のような包容力が魅力です。歌手陣も豪華そのもの。モノラルですが聞きやすくまとめられております。
「一千人の交響曲」のソリスト:
メリッタ・ムゼリー(第1ソプラノ、罪深き女)、ゲルダ・シェイラー(第2ソプラノ、懺悔する女)、ヴィルマ・リップ(第3ソプラノ、栄光の聖母)、ヒルデ・ロッセル・マイダン(第1アルト、サマリアの女)、ウルズラ・ベーゼ(第2アルト、エジプトのマリア)、フリッツ・ヴンダーリヒ(テノール、マリア崇敬の博士)、ヘルマン・プライ(バリトン、法悦の教父)、オットー・エーデルマン(バス、瞑想する教父)、フランツ・シュルツ(オルガン)、ウィーン楽友協会合唱団、ウィーン・ジングアカデミー、ウィーン少年合唱団
交響曲「大地の歌」
この演奏はライヴ・マニアが古くから良く知る名演。「大地の歌」を男性二人で担当する名盤というと、バーンスタイン+ウィーンフィル盤が有名ですが、それより2年前の演奏。ディスカウはここでもバリトン独唱を担当しております。そしてヴンダーリヒのテノール独唱が絶唱そのもの!この二人は同じ年の6月にもクリップスとも演奏しておりますので、「男性2人による大地の歌」は当時この2人が独占していたのでしょう。カイルベルトのマーラーは古典音楽とロマン音楽を行ったり来たりするシューベルト的リリシズムを重視したものと言えそうです。音質が若干籠る感じなのが残念ですが、内容の充実は明らかです。(2/2)
ミューズ貿易
発売・販売元 提供資料(2017/07/26)