ファン待望、ジョルジュ・パッチンスキー2年振りの新作です。期待を裏切ることなくピアノ・トリオ編成。しかも、今回は、ピアノにStephane Tsapis、ベースにMarc Buronfosseと、前作と同じメンバーが結集。もちろん、録音は、ヴァンサン・ブルレ!鉄壁のメンバーが勢ぞろいしました。作品の路線は、前作『ル・ビュ、セ・ル・シュマン』の延長線上といえそうです。その『ル・ビュ、セ・ル・シュマン』では、パッチンスキーが、《ある冬の夜に見た夢》を描くという展開で、新プラトン主義の創始者であるプロティヌスの書なども登場するなど、哲学的で、謎めいた物語をさまようようなドラマを音楽として描き出してだしていましたが、本作は、ある旅人の体験した不思議な物語が背景のよう。誰もいない駅に静かに一人たたずむ旅人。駅から逆方向に動き出す列車・・・今回もそんな独特な世界観を背景にして、音楽も神秘的です。一曲一曲、最長でも5分という長さでつづられる16編の曲は、今回も陰影、緩急のコントラストが鮮やかなサウンド。フランス人らしい思慮深く、思索的な場面もあれば、スウィンギーに転がるような音の流れあり、ワルツを思わせる場面あり。印象派的な淡い音空間あれば、キュビズムやシュールレアリスムを思わせるアブストラクトな場面あり・・・今回もパッチンスキの探究の旅は続きます。同時に、今回も、そのサウンドに立体感を与える、ヴァンサン・ブルレの手腕がききものです。ミステリアスな物語を紡ぐピアノの旋律に、繊細にからむドラムのブラシの響き、それらの中に目を覚まさせるような鋭さをもって空間を切り拓くシンバルあり、また、それら全てをやわらかく包み込むマレットによる唯一無二の豊かな響きあり・・・それらが、一つの世界観をもって描かれるのは、エンジニアの力あってこそ。ここには、長年にわたってタッグを組むドラマーとエンジニアの仲だからこそのサウンドがあり、アーティストの創りたいサウンドを理解するエンジニアだからこその音像演出を感じます。録音は2016 年11月。前作から2年の時を経た3人の姿がここにあります。
発売・販売元 提供資料(2017/06/23)