ポーランド出身の若手ヴァイオリニスト、Adam Baldychの新作は、2015年リリースの前作『Bridges』と同じく、日本で高い人気を誇るピアニスト、ヘルゲ・リエン率いるトリオが参加。更に今作では曲により、ノルウェー出身の大人気サックス奏者、トーレ・ブルンボルグも加わる。木の温もりが感じられる倍音豊かな音色。技巧的な面を表に出すことなく、音色やダイナミクスのコントロールによる表現力で魅せるプレイ・スタイルである。コンポジションは、シンプルかつ牧歌的なメロディ、洗練されたハーモニーが何ともヨーロピアンで魅力的だ。ヘルゲ・リエン・トリオとの相性も抜群で、北欧的な透明感のあるタッチがその魅力を何倍にも引き立てる。そしてこのサウンドに、トーレが合わないはずもない。1曲目"Prelude"から始まり、8曲目"Coda"で終わる、ひとつのコンセプト・アルバムとなっている。今作『Brothers』は、亡くなった弟の思い出に捧げられたもので、"Faith"、"Love"、"One"などのシンプルな曲名にも、特別な想いが感じられる。"Prelude"のテーマをモチーフに物悲しく展開する2曲目"Elegy"、ヴァイオリンのピチカートと明るい曲調が愛らしい4曲目"Love"、兄弟を亡くした悲しみからもがき苦しみ、乗り越えようとしているかのような6曲目"Brothers"など、タイトルと曲が直結し、情景が浮かぶのは、Baldych のセンスによって成せる業だろう。8曲目"Shadows"の、ヴァイオリンとトーレのサックスが、ユニゾンにもかかわらず、まるでハーモニーのように重なり合う様子は何とも美しい。ヨーロピアン・ジャズ・ファン、北欧ジャズ・ファン、ヘルゲ・リエン・ファン、そして出番こそ少ないものの、トーレ・ブルンボルグ・ファンにも聴いていただきたい作品だ。
発売・販売元 提供資料(2017/06/23)