ニューオーリンズ出身で、高校時代からの友人であったJoshua EustisとCharles Cooper(惜しくも2009年に他界)によるエレクトロニカ・ユニット、Telefon Tel Avivが2004年にシカゴの名門レーベル、Hefty Recordsから発表したセカンド・アルバム。2016年蔵出しアーカイヴ音源を加え再発された、デビュー・アルバム『Fahrenheit Fair Enough』は今日においてもゼロ年代エレクトロニカ~IDMの金字塔的作品として高い評価を維持しているが、本セカンドも名作として名高い。
ポリリズミックなプログラミングを基軸にしつつ、本作ではヴォーカル・トラックも披露。Radioheadのカヴァーを企画された際に出会い、本作のリリース前のEP『Immediate Action #8』にもフィーチャーされていたLindsay Andersonと、Build An ArkのメンバーでもあったDamon Aaronをフィーチャーし、本編のうち7曲がヴォーカル・トラックで構成されている。さらにタイトル・トラックではロヨラ大学シカゴ校のチェンバー・オーケストラが参加している他、随所でストリングスが効果的にフィーチャーされ、ファーストのエレガント且つダイナミックなエレクトロニカの要素はそのままに、さらにフォローアップして新たな境地へと到達した。
センチメンタルなメロディのキーボードのフレーズとグリッチなエレクトロニクスやブレイクビーツが、ストリングスなどの室内学的音色に絶妙に絡み、時にシネマティックに、時にダンサブルにと、複雑に入り組みながら美しく壮大な情景を描き出す。Damonのソウルフルなテノール・ヴォーカル、Lindsayのアダルティで味わい深いヴォーカルとの融合も見事で、全体に通底するドラマティックな構築感に引き込まれる。
今回の再発にあたり、坂本龍一のリミックスが追加収録。
『Fahrenheit Fair Enough』と対をなすゼロ年代エレクトロニカ史に燦然と輝く名盤である本作を是非この機会に。CD再発は日本のみ。
正方形紙ジャケット仕様
解説付き
発売・販売元 提供資料(2017/06/07)
大好評のファーストのリイシューに続き、名作セカンドのCD再発も決定!坂本龍一リミックス収録! (C)RS
JMD(2017/05/24)
その情感溢れるサウンドの奥行きから、例えばニュー・ソウル、はたまたクロスオーヴァー、あるいはシンガー・ソングライターとか、ディテールに時代とジャンルを隔てた共通項を見い出すことが少なくない最近のエレクトロニカ……3年ぶりとなった才人デュオのセカンド・アルバムもしかり──日本盤には新曲“Jouze Desu Ne”(!?)など2曲が追加。IDMとかエクスペリメンタルと説明されて後退りするのはもったいない。ラップトップ音楽だが、オーケストラや男女のヴォーカル、ローズやウーリッツァーといったエレピとのハーモニーが端麗。それも単にデザインされた美しさにあらず、鼓膜の向こう側を悪戯にくすぐる電子音が歪な世界を広げ、メランコリックな幻想を抱かせる。その一方で〈プリンス聴いてたでしょ?〉とツッコミたくなる曲もあったりして。とにかくビューティフルなポップアート盤。陽のあたる場所で聴きたくなる。
bounce (C)栗原 聰
タワーレコード(2004年07月号掲載 (P68))