現行バレアリックシーンの羅針盤レーベル〈INTERNATIONAL FELL〉が送り出す、新たなアーティスト・ソロ・アルバムは、レーベル総帥マーク・バロットとドイツ・フランクフルト名門レーベル〈RUNNING BACK〉を束ねるスゴ腕A&R・DJ、ゲルト・ヤンソンと、同レーベルの看板プロデューサー、フィリップ・ラウアーによるユニット、タフ・シティー・キッズが手を組んだタラマンカ・システム(TALAMANCA SYSTEM)による待望のファーストアルバム「TALAMANCA SYSTEM」。
2014年、非ダンス的なアプローチが色濃かった〈INTERNATIONAL FELL〉作品のイメージを、鮮烈デビュー作「BALANZAT」によって、一気にインディダンスのフロアへと傾けながらも、3年という長い期間をかけて熟成を続けていた本作品。
トレンドでもある、90年代イタロ・ハウス・リバイバルを踏襲するようなメトロノーム・リズムで刻まれる現行ドリーム・ハウスから幕をあけ、マイク・フランシスなどバレアリック古典を彷彿させるようなメロウなブリージンポップス、美しいアシッドフレーズによって彩られつつ重心を落とし、獣声とコンガを交えた呪術性によって内面へと奥まってゆくカタルシスを喚起させ、シンセの多重録音のレイヤードや、イタロ・ディスコを懐古、否、回顧するような純情と情熱の狭間から、エンドロールの流れるようなライブラリ・ミュージックを模したサウンド・トラックによって、それら開放していく、まるであたかもその順列にもストーリーを持たせた短編小説を読むような気分で堪能することができる、端倪すべからざる全9曲を収録。
バレアリックシーンの総帥、インディダンスの雄と、そのプロダクションの体現者という夢のような競演が織り成す、夢のようなサウンドは三者三様の才能がこれでもかと横溢し、カラフルに彩られつつも、卓越したサウンドプロダクションによって美しい調和を成しており、まるで制作されたフランクフルト・アム・マインのスタジオに、イビザのたっぷりとした陽光が差し込んだ、メンタルとフィジカル、相互に作用するバランスを宿していて、人の少ない静寂で平穏な、そして豊かな自然に恵まれた屋外から、メインストリームのダンスフロアまで聴く場所を問わない。
発売・販売元 提供資料(2017/05/11)
バレアリック・レジェンドとして名高いホセ・パディーヤの15年ぶりとなる作品や自身のソロ作も含め、ウルグアイからイビザに拠点を移してからも好リリースを続けるインターナショナル・フィール主宰のマーク・バロット。そのマークと、フランクフルトのタフ・シティ・キッズから成るトリオがこのタラマンカ・システムだ。2枚の12インチ・シングルでの好感触を受け、フル・サイズのアルバム制作へと発展したというここでのサウンドは、爽やかなシンセ・サウンドを基調とした現行バレアリック最前線。冒頭を飾るピアノ・ハウス・チューン"Transatlantique"に顕著な初期ハウスやイタロ・ディスコへの志向性はディミトリ・フロム・パリが手掛けたエロディスコティークにも通じるもので実にグルーヴィー。後半にはチルアウトなムードを含んだダウンテンポが顔を揃え、シンセのレイヤーが織り重なるアンビエント曲"Aurorca"で心地良さの極みへ。これからの季節にはもう最高の一枚だろう。
bounce (C)藤堂輝家
タワーレコード(vol.404(2017年6月25日発行号)掲載)