ディーン・ブラント、アルカ、OPN、ジェイムス・フェラーロと並び、その圧倒的なまでにカリスマティックな音楽性でフリークスを熱狂させてきた鬼才アクトレスことダレン・カニンガム。「音楽よ、安らかに眠れ」----- 強烈なステートメントとともに発表されたアルバム『Ghettoville』(2014)以来となるオリジナル5作目のアルバム『AZD(アジッド)』を発表する。
これはデトロイト・エレクトロからジェームズ・ハンプトンにラメルジーまで飲込んだ漆黒ズル剥け超合金スタイルで行く並行世界への旅である。「同じ曲でそれぞれ50曲くらいのヴァージョンを作ったんだ」カニンガムは回想する。
「テープやCD、古いコンピューター、USBとあらゆるところにパーツが保存されているから、全てを収集して完成させるのは気が滅入るね。最終的には合計3時間分の曲が出来上がった。」と語る本作は、ラメルジーのライミングをエディットしながらライヒ「It's Gonna Rain」をアップデートするかの如く三半規管を直撃する怪エレクトロ「CYN」や戦慄の先行シングル「X22RME」などこれまで同様に煙に巻きながらも、明らかに今までとは一線を画す"オン"なモードを発露。
底知れぬ才能に打ちひしがれる事必至の新たなミュージック・システム=AZDがここに誕生した。
発売・販売元 提供資料(2017/03/17)
この名義での新作は久々。覆面を被りきれなかったレヴァンティス作品でヤバみの探求に一段落つけたのか、今回はニューウェイヴ時代のテープ・コラージュのような側面も備えつつ、かつてなくダンサブルな意匠が明快な印象を残す。仰々しい威圧感を剥ぎ取ったような作風が昔からのファンにどう響くのかは知らないが、場面転換の目まぐるしさと開放的な聴き心地は、前作以降に出した〈DJ-Kicks〉の中身に通じるものかも。
bounce (C)出嶌孝次
タワーレコード(vol.402(2017年4月25日発行号)掲載)