1976年フランクフルト生まれのエリック・シェーファーは、クラシック・パーカッションと現代音楽を学んだ後、ジャズをジェリー・グラネリとデヴィッド・フリードマン、作曲をマリア・シュナイダーに師事。また最近ではヨアヒム・キューンの新作、『Beauty & Truth』のトリオに抜擢されるなど、今勢いに乗っている注目ドラマーだ。
シェーファーは、また、日本に大きな関心を寄せているアーティストでもある。過去に京都に3か月滞在。寺院を訪れ、雅楽を聴き、能を観て、周囲の山々を放浪し、それらの中で印象に残ったものを、作曲の為にスケッチしたとのこと。龍安寺石庭の石の周りに苔むした緑。赤い楓の葉から垣間見た比叡山。大阪港の荒れた地域などだ。また、伊勢神宮・日光東照宮などでの書のパフォーマンスや、大河ドラマ『軍師官兵衛』の題字も手がけた京都の書家・祥洲に出会い、話を聞いた。書家の巨匠達は、"円相"と呼ばれる一筆書きの円は自分を素直に表現するものだとして、それを書き続けた、ということ。そして、詩人・種田山頭火の、模倣するのではなく生まれたままを表現する、ということなどだ。そんなシェーファーが、日本人の2人のアーティストをベルリンに招いて録音したのが、この新作である。一人は、中央線ジャズの第一人者であり、国外でも精力的に活動するマルチリード奏者、梅津和時。一人は、フランクフルト在住、琴という古楽器に新しい可能性を拓く、菊地奈緒子である。シェーファーは、ラジオで梅津和時の音を聴き、その柔らかさと、竹のようなしなやかさと、透明感に魅せられたという。また、菊地奈緒子が日本の琴の伝統に根付いているだけでなく、現代クラシックも演奏していることが、今作には欠かせなかったそうだ。本作は、日本でのスケッチをもとに作曲されたシェーファーのオリジナルを中心に構成した12曲。1曲目"Shoshu-san"は、上記の書家のことで、今作のジャケットも手掛けている。3曲目"Santoka's Walk"は、種田山頭火のこと。どの曲も、タイトルの示すものを聴く人の目、そして心に想起させるのは、シェーファーの日本への深い理解と愛情による賜物と思われる。幽玄ささえもたたえる音の風景は、"わびさび"神秘"というものさえ感じさせる。またそれらと美しいコントラストを描き、興味深いのが、5曲目の"Tengu"と9曲目、11曲目だ。スロウ~ミディアムのテンポを中心としている構成の中で、躍動感あふれるのがこれらの楽曲。5曲目は天狗が踊る様子が目に浮かぶようであり、9曲目、11曲目には、現代的な日本も描かれる。インプロヴァイザーとしての梅津、菊地の魅力をフィーチャーしたこれらの演奏は、鞍馬の火祭をも訪れたというシェーファーの受けたインパクト、古えのものから現代的なものが混然とある日本という国に抱いた興味の大きさも物語るようだ。一方、梅津が描いた楽曲も一曲収録。"日本人自身が自らの故郷/東北を描いた楽曲"にはやはり、ドイツ人の描く日本とはまた違った世界がある。その違いも興味深い。日本の音楽、哲学、宗教に魅せられ、自ら勉強・体験した、シェーファーから見た日本を表現。日本への愛と関心に満ちた、日本と西洋の音楽の橋渡しに挑む意欲作だ!!
発売・販売元 提供資料(2017/03/14)