1947年5月23日NY生まれ、70年代から詩的かつプログレッシヴな演奏で独自の音楽世界を築きあげてきたピアニスト、リッチー・バイラーク。そして、奇しくもちょうど20年後1967年5月23日にシュトゥットガルトで生まれ、NYをベースに活躍するグレゴール・ヒューブナー。それぞれ、70歳、50歳を迎える2人の記念すべきマイルストーンともいうべきライヴ作の登場です。二人はNYとヨーロッパと異なる地に生まれていますが、ルーツは双方とも東ヨーロッパ。また、まったく別々の道をたどりつつも、マンハッタン・スクール・オブ・ミュージックで、クラシックのコンポジションにおいて、同じLudmilla Uhlelaに師事。その共有したものは、あまりにも大きな偶然ともいえますが、しかし、それはもはや、偶然ではなく運命ともいえるのでしょう。初めて共演したのは1996年で、現在20年を越える共演歴。そして、90年代後半から2人は、お互いがルーツとするクラシック音楽とNYのポスト・バップの融合を図った『Round About Bartok』、『Round About Federico Mompou』、『Round AboutMonteverdi』という画期的な三作品をリリースしていますが、年齢を重ね経験を積みながらも、今なお、まったく変わらない気持ちで、演奏が出来るのだそうです。ヒューブナー曰く「リッチーは、《1996年にNYのアパートの一室で初めて一緒に演奏した本当に最初の瞬間から変わらない感覚で今も演奏出来る》と語るんだ。もちろん、私たちは信じられないくらい音楽的なものを発展させてきたと感じているけれど、私自身もリッチーと同感だ。なんというか、私たちの魂と音楽に対する気持ちは、最初の時からすでに固いものがあったのだろう」とのこと。当の2人が語るのですから、それは紛れもない真実の感覚でしょう。そして、本作は、そんな二人の演奏が理想的な形で録音され、作品化されたものといえましょう。(1/2)
発売・販売元 提供資料(2017/03/21)
共有するルーツを核にしてバルトークにインスパイアされた2人のオリジナル(M2)あり、バッハのシシリアーナ"をアレンジした演奏(M3)あり、しかし、それらを、即興によって、ジャズと確固としてコネクトしていくのがこのコンビ。ジョージ・ムラツとビリー・ハートといったリッチー・バイラークの数々の演奏を長年支えてきたリズム・セクションに、ランディ・ブレッカーを迎えたクインテット演奏は、詩的、かつ鋭角的な即興の絡みをもって、展開されていきます。いわずと知れた名スタンダードナンバー"You Don't Know What Love Is"、そして、ラストには"Transition"。そのあたりには、コルトレーンが60年代に切り拓いた演奏を引き継いだアーティストの気概も感じさせられます。そして名曲"Elm"!リッチー・バイラークの作品のタイトルともなった名曲のこの静謐感、また明暗が微妙に交錯するメロディの綾には、旋律を覚えてもなお、毎回新鮮さとカタルシスがもたらされますが、この日の演奏は、また特別。熱い情感がこもったヴァイオリン・ソロとピアノの対話あり、一音一音確かめるような慈しみにも満ちたピアノ・ソロあり、その演奏に込められたパッションは、最高にドラマティックです。録音は、2012年とのことですが、70歳を迎えたリッチー、50歳を迎えたヒューブナー、25歳を迎えたACTレーベルを記念した作品。リッチー・バイラークは、年齢を経ても妥協なく、ある意味頑固なまでに自らの音楽を貫いているアーティスト。今後もその演奏を聴かせ続けてほしいものです。(2/2)
発売・販売元 提供資料(2017/03/21)