2004年のデビュー以降、「プリペアード・ピアノ」の可能性を一貫して探求してきたドイツ人ピアニスト/作曲家ハウシュカ=フォルカー・ベルテルマン。作品ごとにコンセプトやテーマを設け、さまざまなサウンドに挑戦しつづけ、常に新鮮な聴取体験を提供してくれるハウシュカが、前作『Abandoned City』から3年ぶりにニュー・アルバムを届けてくれました。
通算8作目となる本作『What If』において、ハウシュカがより先へと前進するために新たに導入したのが「自動ピアノ(ピアノラ、プレイヤー・ピアノとして知られる)」。巻紙(ピアノロール)に記録された楽譜を読み取って空気の力で自動演奏するピアノとして19世紀後半に発展した楽器で、現代では巻紙ではなく録音データを使ってコンピューター制御による自動演奏が行われます。
彼のトレードマークであるプリペアード・ピアノ。消しゴムなどの物体をピアノの弦にはさむことで生み出されるその多彩な音色と融合を果たすべく導入された自動ピアノの役割は、人間には不可能な演奏スピードをもたらすことでした。自動ピアノが演奏できるスピードを活用するようにプログラミングし、その結果生じたサウンドをマニピュレート。作曲の拍子を強調するためにレイヤーが構築され、ハウシュカ史上もっとも重厚だった前作『Abandoned City』を凌駕する圧倒的な作品に仕上がっています(プリペアード・ピアノとシンセ、そして自動ピアノ以外では、1曲のみストリングスを使用)。
「What If=もし~だったら」というアルバム・タイトルや各楽曲のタイトルには、音楽分野を越えた考察を引き起こすことを目的にしているとのこと。頭から離れないメロディー、ミステリアスなサウンドと複雑なリズムパターンに溢れる本作は、極めてドラマティックな手法でピアノ音楽のイメージを再定義するような、ハウシュカの輝かしいキャリアのなかでまぎれもなくもっとも独創的な作品と言えるでしょう。
本作リリース後に行われる一連のツアーではグランド・ピアノと2台の自動ピアノを使用したライヴ・パフォーマンスが披露されるようです。ダスティン・オハロランと共作した映画『LION』(邦題『LION / ライオン~25年目のただいま~』)のスコアにより、ゴールデングローブ賞とアカデミー賞の作曲賞にもノミネート。その名は今後ますます世界に轟くことでしょう。
ライナーノーツ/ボーナストラック2曲のダウンロード・コードつき。
発売・販売元 提供資料(2017/03/27)
2004年のデビュー以降、<プリペアード・ピアノ>の可能性を一貫して探求してきたドイツ人ピアニスト/作曲家ハウシュカ=フォルカー・べルテルマン。作品ごとにコンセプトやテーマを設け、さまざまなサウンドに挑戦しつづけ、常に新鮮な聴取体験を提供してくれるハウシュカが、前作『Abandoned City』から3年ぶりにアルバムをリリース。 (C)RS
JMD(2017/03/27)
ジョン・ケージによって発明されたプリペアド・ピアノを用いてその表現方法の可能性を探求し続けているドイツの作曲家による3年ぶりの新作。今作で彼が新たに導入した方法は録音素材を使ったコンピューター制御による自動演奏=「自動ピアノ」による演奏。それにより生まれた、人間には演奏不可能な打弦音をプログラミングする事で、性急でありながら極めて重厚なピアノの響きをもたらしている。更にそこにノイズや電子音楽の意匠を凝らしており、今作の為に掲げたテーマの一つである「音楽という分野を越えた考察」を引き起こす事に一役買っている。もはや作家の野心すら感じ取れるような1枚。
intoxicate (C)山岡弘明
タワーレコード(vol.127(2017年4月10日発行号)掲載)