『ガーディアン』誌がビョークを引き合いに出し紹介するなど、自主リリース段階からイギリスの著名メディアの多くが熱心にサポート、早耳リスナーの注目を集めていたケリーは、2015年にジェニー・ヴァルのセイクリッド・ボーンズからのアルバム楽曲リワークで新機軸を開拓すると、プリンス・トーマスやネナ・チェリーのリリースで知られるノルウェーの名門レーベル「スモールタウン・スーパーサウンド」からのEPリリースでファン層を拡大、クロスオーバーな支持を確立して次なる動向が注視されていました。昨秋のEPに続いて早くも登場したこの待望のデビュー・アルバムは、ビョークとアーサー・ラッセルから大きな影響を受けてきたという彼女らしい、エクスペリメンタルなエッジとリスニング・フレンドリーなエレクトロニック・サウンドを巧みに両立させることに成功した力作です。敬愛するアーサー・ラッセルへの愛をドープなサイケデリック・ビートにのせアウトプットしたM(2)「Arthur」、ジェニー・ヴァルのダークな魔力が炸裂したM(3)「Anxi」、その進化と深化を克明に刻み込んだM(5)「Evolution」、トロピカルなシンセ使いの心地よいM(6)「Bird」、抑制を利かせながら強烈なサブ・ベースにヤラれるEPリード曲のM(7)「C.B.M」、ダニエル・エイヴリーと共作したアンビエントなM(9)「Keep Walking」などなど、収録楽曲は、いずれもキャラの立ったシングル級のキラーばかり!彼女は、ダニエル・エイヴリー楽曲のフィーチャリング・ヴォーカリストからキャリアをスタートし、インディ・バンドのヒストリー・オブ・アップル・パイのベーシストとしても活動するかたわらで(現在は脱退)、ダニエルやジェームズ・グリーンウッド(ゴースト・カルチャー)らファンタジー・サウンド一派のサポートを受けながら独自のエレクトロニックなスタイルを磨き上げてきた。ダニエル・エイヴリー/ファンタジー・サウンド直系のストイックなエレクトロニック・モードでソフトでサイケデリックなドリームポップへのアプローチを試みる唯一無二のニューカマー。是非ご注目ください!
発売・販売元 提供資料(2017/02/07)
ヒストリー・オブ・アップル・パイの元メンバーによる初のソロ作。Pitchforkが〈ドリーム・ポップとストイックなテクノの融合〉と評している通り、越境性の高い電子音楽を創造していて、ダニエル・エイヴリー作品などへの客演経験をしっかり楽曲に落とし込んできた印象だ。実験的なリズム展開にドキッとさせられつつ、コクトー・ツインズみたいに陰影を含んだ歌声が気持ち良くて、何度もリピートしてしまうという罠!
bounce (C)人與拓馬
タワーレコード(vol.401(2017年3月25日発行号)掲載)