Rolling Stone (p.82) - 3 stars out of 5 -- "When it's not luring you to the dance floor with thrilling 1980s pop, M83's widescreen music either sounds like a lost John Hughes movie or gets trippy..."
Spin (p.73) - "[A] pervasive dedication to heart-swelling melodrama is M83's gift....The album is full of goose-bump moments..."
Spin (p.45) - Ranked #19 in Spin's 'The Top 40 Albums Of 2011' -- "[T]he results bring to mind a European art film, one taking place in an idealized past where innocence is only an illusion away."
Entertainment Weekly (p.73) - "M83 mastermind and gauze-pop aficionado Anthony Gonzalez wraps hooks and hallucinations in bubbly melodies..." -- Grade: B+
CMJ - "Anthony Gonzalez, the man behind M83, has an obvious concept: a larger, grander gesture of his artfully crafted, heavily nostalgic ambiance, admittedly drawing inspiration from other large-scale releases..."
Mojo (Publisher) (p.93) - 3 stars out of 5 -- "HURRY UP...employs banks of multi-tracked vocals, waves of epic Sigur Ros-style synths and a celestial production."
Rovi
人間が予想外の変化をするのは、環境が変わった時か、思索のうえに変化を志した時か、もしくは恋をした時か。M83ことアンソニー・ゴードンがこのどれに当てはまるかは定かではない。が、2枚組の新作『Hurry Up, We're Dreaming』を聴いていると、音楽と向かい合う姿勢そのものが開放的になったようだ。フランス人のエスプリを残しながらも、どこかしらキュートでグルーミーだったのが過去の彼の音楽だとしたら、今回は丁寧な音の層はそのままに、ポップかつ荘厳。〈コンピューターが出来る前のやり方で作る、というのが主軸〉と語るように、アナログ・シンセの音と共にギターやドラム、サックスなどが活き活きとした生命感を伴って鳴っている。ヴォーカルも心地良い。あたかも曇りガラスの向こう側でアンソニーが大声を出したり叫んだりしているかのようで、そちら側で起こっている楽しい出来事にまで思いを馳せたくなる。そのうえ興味深いのは歌詞だ。〈僕らに物語はいらない、現実の世界なんかいらない〉と、逃避もリアルも不要とする立脚点で作品はスタートし、〈キミと僕がいる場所〉や〈手にしているもの〉を丁寧に紡ぎながら、Disc-2の本編最終曲では〈僕が自分の国の王様なんだ〉と、揺るがぬ真理へ辿り着く。彼自身の魂の軌跡を描くためには、なるほど2枚組の容量が必要だったのだろう。そして最後のカタルシスを求めてまた、繰り返し聴いてしまうのである。
bounce (C)妹沢奈美
タワーレコード(vol.337(2011年10月25日発行号)掲載)
M83ことアンソニー・ゴンザレスの作り出す音楽は常にロマンティックだ。そして映像的でもある。そんな彼がちょうど映画一本分の時間に当たるCD 2枚組のアルバムを作り上げたのは必然だったのかもしれない。エレクトロニカ色の強い2001年のデビュー作『M83』以来、徐々に歌に重心を傾けながらも、〈ロマン〉というテーマは常に一貫してきた彼。2008年作『Saturdays = Youth』でのブレイク、そしてその後のキラーズやデペッシュ・モードとのツアーによってみずからの表現に確信を得たようだ(力強いシャウトを交えた唱法にそれがよく表れている)。お馴染みのモノローグを交えたトラックやインタルード的アンビエントな小品を挿みつつ、分厚いシンセの幕が降りてくるポップソングから、シューゲイザーを通過したギターが鳴り響くロック・チューンに至るまで、彼の壮大な〈ロマン主義〉が徹底して貫かれた1時間半。これまでの音楽活動の集大成であると同時に、己の美学を磨き上げていった結果、新しい未知の境地--いわば〈ニューロマ〉ならぬ〈シューロマ〉といった趣の--へと突き抜けてしまったかのような感覚すらここにはある。ひょっとしたらこれはフランスという国の気質も関係しているのかもしれない。ダフト・パンクの世界的なブレイクの裏にベッタリ貼りついていたのも、やはり過剰にベタな〈欧州ロマン〉だったのだから。
bounce (C)佐藤一道
タワーレコード(vol.337(2011年10月25日発行号)掲載)