ザ・ガスランプ・キラー待望のデビュー・アルバムが本作『Breakthrough』だ。これまで、EPやゴンジャスフィのプロデュースで培ってきたものはもちろんのこと、DJプレイで展開してきた音楽性、また世界各地をDJで回ってきたことから得た影響などが反映された、まさにザ・ガスランプ・キラーの集大成といえる大注目作だ。『Breakthrough』にはロサンゼルスという土地にインスパイアされたサイケデリックなサウンドと、世界各地の様々なシーンからの影響が反映されている。レゲエとヒップホップとブレイクビーツからスタートした彼のDJ人生は、10年あまりの活動の中で多様な音楽を飲み込んできた。彼の父親はメキシコ・シティ出身だが、トルコとレバノンの血が流れており、ワールド・ミュージックも自然と吸収した。また、チェリー・ストーンズやアンディ・ヴォーテルやNow Againのイーゴンといった非西洋圏の音楽の目利きたちの影響も受けて、インド、アジア、中近東の古いレコードにビートを発見していくことにものめり込んでいった。しかし、『Breakthrough』は単なるビートの寄せ集めではなく、10年に亘って世界を周り、各地でパフォーマンスを行ってきたザ・ガスランプ・キラーのすべてを反映した音楽プロジェクトだと言える。ゴンジャスフィ、エイドリアン・ヤング、ディムライト、デイデラス、サムアイアム、シゲト、ミゲル・アトウッド・ファーガソン、コンピューター・ジェイなど多彩なゲストがこのプロジェクトを支えている。
発売・販売元 提供資料(2016/08/08)
〈Low End Theory〉のレジデントとしても知られる、見た目も中身も狂ったLAの怪人、ガスランプ・キラーのファースト・アルバムがお目見え。ファインダース・キーパーズでのミックスCDやゴンジャスフィ作品でのプロデュース仕事を聴けばわかる辺境サイケへの偏愛ぶりは、この自身の作品で猛爆発してます。ゲスト参加したゴンジャスフィ、デイデラス、サムアイアム、ディムライトなどの錚々たるビート職人たちも、怪しげな臭気を放つサイケの泥沼に飲み込まれてもがいているかのような、いや、それに立ち向かわんと強靭なビートで対抗するかのような……結局のところガスランプ・キラー・ワールドです。それほどまでに彼の毒気は強く、怪獣大戦争を眺めるような気分で楽しむのもアリ。
bounce (C)池田謙司
タワーレコード(vol.348(2012年9月25日発行号)掲載)