ワゴン・クライスト名義では2004年以来7年ぶりとなるアルバム 『TOOMORROW』をリリース。彼の個性をアルバム全編に散りばめた傑作となっている。
目が回るほど多種多様なサンプルを駆使し、360度あらゆる方向に広がっていくサウンド。そして今までになくバラエティ豊かでポップな世界が繰り広げられていく。ディープなベースラインと特徴的なキーボード・サウンドが脳を揺さぶる「MANALYZE THIS!」、ア・トライブ・コールド・クエストの未発表作品を聴いているかのような錯覚に陥る「AIN'T HE HEAVY, HE'S MY BROTHER」、「ACCORDIAN MCSHANE」はキャッチーなオーケストラ・サウンドで始まり、幾重にも重なって展開するシンセラインが聴く者を酔わせる。サイレン音をサンプリングした、どこか懐かしさを感じさせる「My Lonely Scene」やコメディタッチの刑事ドラマにでも使われていそうなサウンドに思わずニヤリとしてしまう「RESPECTRUM」、激しいビートにアシッド・サウンドが絡み合う「Wake Up」、「LazerDick」はクールで楽しいフューチャー・ファンク。そしてドリーミーでポップなグルーヴが心地良い「HARMONEY」 等、ブレイク・ビーツやヒップ・ホップ、ジャズやファンクそしてディスコやハウスなど、様々なジャンルのテイストを持った色とりどりの楽曲をバランス良く組み合わせ、独自のスタイルを構築し、一つの作品として見事に纏め上げている。
そして今もなお彼の音楽に対する探求心は衰えることなく、更に音楽の可能性を広げて見せ、シーンにおいて彼が最重要人物であるという事を改めて証明したアルバムとなっている。
発売・販売元 提供資料(2016/08/08)
J・ディラ・トリビュート作の素晴らしさも記憶に新しいルーク・ヴァイバートさんがワゴン・クライスト名義では7年ぶりとなるアルバムを完成。サンプリングの意匠に並々ならぬこだわりを見せてきた奇才の最高到達点と言っても過言ではないほど、丹念な仕事ぶり、なのに聴き心地はまったくそう感じさせないポップな建前で通しているのがホント憎たらしい。90年代に思春期を送った方には甘酸っぱい後味も残すであろう快作。
bounce (C)入江亮平
タワーレコード(vol.329(2011年2月25日発行号)掲載)