予定から数年レヴェルで延期になった時点で、当初の〈3部作〉じゃなく別の動機付けによる作品に気持ちを移しているのだろうと思っていたら、本当にシリーズ第2部としてニュー・アルバムが律儀に到着。前作『BLACKsummers'night』リリース時のインタヴューで〈希望に満ちていて、気分を昂揚させてくれるポジティヴなアルバム〉と予告していたそのまんまではないものの、ブルージーな感傷や倦怠も美意識のフィルターを通してスピリチュアルな歌世界に変える術はこの人ならでは。イントロが一瞬"All I Do"っぽいダンサブルな冒頭曲をはじめ、躍動するリズムのなかで自在に歌声を泳がせる姿が随所で印象を残すのは、やはり今回も前作同様にライヴ・パフォーマンスから得た興奮をフィードバックした結果でもあるのだろう。もちろん、その空間を支配するヴォーカルの求心力が、〈いい感じなネオ・ソウル風〉の有象無象とは似て非なる点。気合いと野心がリズミックに蠢く力作で、これは『blacksummers'NIGHT』にも期待できそうだ。
bounce (C)狛犬
タワーレコード(vol.393(2016年7月25日発行号)掲載)
祝・復活!! 90年代半ばからディアンジェロやエリック・ベネイらと並んでR&Bシーンを席巻した〈ニュー・クラシック・ソウル〉の旗手として鮮烈なデビューを果たした男が、2001年の3作目『Now』以降の長い沈黙を破ってついに動き出した。ゲストは皆無。ホーン・セクションを含む10人編成のバンドをバックに、シンプルながらもより完璧なサウンドを追求したような、緊張感とファンクネスの漲った楽曲が選りすぐられている。単にメロウかつ官能的な雰囲気だけで聴かせるのではなく、バンドならではの有機的なアレンジの妙も楽しめ、どこか耳馴染みのあるメロディーからも聴くほどにディープさが滲み出てくる高純度なソウル・ミュージックだ。しかもこれが3部作の第1弾らしいので、今後の展開にも期待大!
bounce (C)卯之田吉晴
タワーレコード(vol.312(2009年07月25日発行号)掲載)
悲しみを昇華させるような名曲「Pretty Wings」はミュージックビデオも最高でした。