2009年のデビュー以来100万枚のセールスを誇り、彼らの楽曲は試聴アプリSpotifyでは200万回、YouTubeにおいては2000万回の再生回数を記録。コールドプレイ、ローリング・ストーンズやデーモン・アルバーンのサイド・プロジェクト、アフリカ・エクスプレスらからのリクエストで共にツアーを実施したり、グラストンベリー、ロラパルーザやコーチェラといった主要音楽フェスの常連となった。また、これまでにオーストラリアのグラミー賞ARIAミュージック・アワードの受賞、さらにブリット・アワードにおいて"ベスト・インターナショナル・グループ"にもノミネートされた経歴を持つ。そんな中、2014年にロンドンでファン・クラブ向けに開催した3公演以降目立った活動がなかった彼らが、ついにみんなが待ち望んでいた新作を完成させた!
今作ではバンド史上初の試みとなる、他のソングライターとの共作が見られる。例えば、今回公開となったファースト・シングル「Fall Together」はジャスティン・パーカー(ラナ・デル・レイ、シーア、バット・フォー・ラッシーズ)が、タイトル・トラックはパスカル・ガブリエル(カイリー・ミノーグ、レディホーク、ゴールドフラップ)とダミアン・テイラー(DJシャドウ、ザ・キラーズ、ビョーク)が手がけているほか、アルバムには他にもベン・アレン(アニマル・コレクティヴ、ディアハンター)やフランク・オーシャンの『チャンネル・オレンジ』の共同プロデューサーで、最近ではアレン・ストーンの新作にも楽曲提供しているマレイらが参加している。
その名も『シック・アズ・シーヴズ』(直訳:結束が固い、固い友情)と題された新作は、まさに今のバンドの状態を表している。周りの期待から生じる多くのプレッシャーの中で制作せざるを得ない過酷な状況や、2013年に経験したギタリスト、ロレンゾの脱退。友好的な別れとはいえ、ファンにとっては悲しい知らせとなってしまった。それらの経験を積んできたからこそ、バンドはあえて新作に『シック・アズ・シーヴズ』という名を冠した。"一発屋"と言われようが、スランプに陥ろうが、メンバーが脱退しようが、彼らの結束は固く、今でもバンドはひとつだということを証明するために。今作は収録曲ほぼ全曲が、ザ・テンパー・トラップ特有のダンス・ビートなどを取り入れたアップ・テンポでスケールの大きい、躍動感溢れるサウンドとなっている。
発売・販売元 提供資料(2016/04/15)
〈2枚目のジンクス〉にぶち当たり、もはやここまでか……と思われたテンパー・トラップ。しかし、4年ぶりとなるこの新作ではデビュー時の輝きを取り戻した印象だ。小気味良いビートとソウルフルな歌声、シンガロング必至のコーラス・パート──待っていたのは、こういう〈踊るロック〉だよ! マレイやジャスティン・パーカーら多彩な制作陣にも目を奪われつつ、本作の勝因はバンドの手癖を大事にした点にあると思う。
bounce (C)柴田かずえ
タワーレコード(vol.392(2016年6月25日発行号)掲載)