晩年の伊福部が邦楽器、とりわけ多絃箏への傾倒を見せていたことはファンならばよく知るところですが、没後10年となる今年(2016年)リリースされるのが二十五絃箏による作品集です。
冒頭に収録された、4つの二十五絃箏による「日本狂詩曲」から衝撃的なサウンドが展開されます。日本的な旋律が多絃箏でより強調されており、「祭」での野趣溢れる響きは、オリジナルのオーケストラ版にも負けていません。
バレエ「サロメ」(1948)からの2曲は、1987年に編曲した演奏会用組曲の素材から伊福部自身が改作したもので、2面の二十五絃箏での演奏です。独特のリズム跳躍は単独の楽器による演奏を困難にしていますが、2面で演奏することによりそれらは克服されています。
独奏曲「胡哦」(1997)は映画「モスラ対ゴジラ」の挿入歌「聖なる泉」の旋律を取り入れており、「胡哦」のあとに「聖なる泉」を収録しています。「聖なる泉」は永瀬博彦の編曲による二十五絃箏伴奏版で、霊妙な歌声と違和感なく融け合っています。なお、「聖なる泉」の歌詞はこれまでメラネシア系の言語をモチーフにした架空言語と考えられていましたが、今回演奏に参加している箏奏者の佐藤康子によれば、フィリピンで多く使われているタガログ語に基づいていることが判明したとのこと。佐藤自身がライナーノーツで解説しています。

発売・販売元 提供資料 （2016/04/04）