ロバート・グラスパーがグラミー賞受賞作『Black Radio』で注目を集めた2012年以降、"新世代ジャズ"が大きなムーブメントとなり、様々なニュー・ヒーローを生み出しているが、新世代ジャズのキーパーソンが数多く参加したケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly』が、2016年のグラミー賞で11部門にノミネートされ大きな注目を集め、その勢いは2016年も衰えそうにない。そんな新世代ジャズのうねりの中で、フライング・ロータス率いる〈Brainfeeder〉の面々が、目覚ましい活躍を見せている。
その〈Brainfeeder〉がカマシ・ワシントン、サンダーキャット、テイラー・マクファーリンに続いて、2016年満を持してジャズ・シーンに投下しようとしているのが、ジェイムスズーことミシェル・ファン・ディンサーのデビュー・アルバム『Fool』である。フライング・ロータス同様、ジャズをこよなく愛するプロデューサーであり、アヴァンギャルド・ジャズから、プログレ、クラウト・ロック、実験的エレクトロニック・ミュージックに至るまで幅広いバックグラウンドを持つ奇才の初作はアルバム自体のインスピレーションにもなったという大御所ジャズ・ピアニスト、スティーヴ・キューン(Steve Kuhn)、ギタリスト/作曲家/編曲家と多才なブラジル音楽界の大物アルトゥール・ヴェロカイ(Arthur Verocai)らが参加。脇を固めるミュージシャンも、サンダーキャットことスティーヴン・ブルーナー(Stephen Bruner)、ピアニストのニルス・ブロース(Niels Broos)、ドラマーのジュリアン・ザルトリウス(Julian Sartorius)とリチャード・スペイヴン(Richard Spaven)、ベーシストのラファエル・ヴォノーリ(Raphael Vanoli)、そしてサクソフォーン奏者のジョン・ダイクマン(John Dikeman)と実力派が顔を揃える意欲作となった。
発売・販売元 提供資料(2016/04/13)
〈Brainfeeder〉よりまた新世代ジャズを賑わす1枚が登場。プロデューサー・ミシェル・ファン・ディンサーのプロジェクト、ジェイムスズーのデビューアルバム。本人がnative computer jazzと定義する通り、シンセサイザーを駆使したアヴァンギャルドな音作りが特徴。全ての楽曲が多種多様で、彼の底知れぬ音楽への探究心が窺える。参加アーティストがスティーヴ・キューンとアルトゥール・ヴェロカイと豪華であることに加え、サンダーキャットやリチャード・スペイヴンなど顔ぶれにも注目。同レーベルのテイラー・マクファーリンの『アーリー・ライザー』に衝撃を受けた人には必聴の一枚。
intoxicate (C)川崎耕平
タワーレコード(vol.122(2016年6月10日発行号)掲載)