Hostess Club Weekender出演経験もあるノルウェー出身の男女5人組バンド、ハイアズアカイトのニュー・アルバム『キャンプ・エコ』のアルバム・タイトルは、アフガニスタン紛争およびイラク戦争中に逮捕されたテロリストの被疑者が収容されている、7つあるキューバのグアンタナモ湾収容キャンプの一つの名前から取られた。それが意味するのは、ヴォーカルのイングリッド・ヘレネ・ホヴィックの心理状態そのものと言える。今作に収録されているのは、2016年に至るまでの18ヵ月間で書き上げられた楽曲で、イングリッドの世界観をガラッと変えることとなった、彼女が実際に体験した出来事からうまれたメモワール的な内容となっている。そしてその体験記は、古いものだと9.11の世界同時多発テロにまで遡るという。
サウンド面でいうと、エレクトロに重心を置いた、ザ・プロディジーやナイン・インチ・ネイルズらの影響を感じ取ることのできる、80年代中頃~90年代音楽。プロデューサーは前作に引き続きコーレ・クリストフェル・ヴェルトゥルハイム(ジャガ・ジャジスト)。ある意味成長を意味する、しかしそれは決して自惚れや自己満足が表れているわけではなく、そして啓発や主張もすることなくバンドとしての進化を遂げているのだ。根本にあるのは、聴く者に理解と一体感を求める、そんな作品なのである。
発売・販売元 提供資料(2016/03/18)
ノルウェーの男女混合バンドによる3作目は、ブッシュ政権をモチーフにした冒頭曲など政治的/社会的なステイトメントを強く打ち出しているが、耳だけで聴くぶんには電子音と神々しい歌声が煌めく、ダンサブルで楽しい一枚だ。影響源としてナイフやプロディジー、ダイ・アントワードらの名を挙げており、加えて"My Mind Is A Bad Neighborhood"を彩るブレイクビーツからは同郷のロイクソップへの敬意も感じられる。
bounce (C)上野功平
タワーレコード(vol.392(2016年6月25日発行号)掲載)