ブライアン・イーノ 新章突入!美しい歌、ミニマリズム、フィジカルなエレクトロニクス、すべてを知り尽くした書き手が綴る物語、そして技術面での新機軸といった数々の要素を、イーノはひとつの映画的な組曲へとまとめあげている。結果として、ブライアン・イーノの最高傑作にして、自身の過去の偉大な名作たちのどれとも似つかないレコードが生まれることになった。
グラミー賞ノミネート作『LUX』以来3年半ぶりとなる新作!過去の偉大な傑作たちのどれとも似つかない意欲作にして最高傑作!ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカバー曲収録!『60年代後期に書かれたルー・リードの「I'm Set Free」は、書かれた当時以上に現在の方がより意義を持つように思える曲だ。』 ブライアン・イーノ
ブライアン・イーノが、グラミー賞にもノミネートされた前作『LUX』以来となるソロ・アルバム『The Ship』のリリースを発表した。本作は、イーノの最高傑作であると同時に、自身の過去の偉大な名作たちのどれとも似つかない、イーノのクリエイティヴなキャリアにおける異なるサイクルの始まりを伝える意欲作となっている。また、ルー・リード作曲のザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド曲「I'm Set Free」をイーノがカバーしていることにも、大きな注目が集まるだろう。ヴェルヴェッツは、美術学生時代に行っていた初期の音楽的探究のインスピレーション源としてイーノが名前をあげたバンドとしても知られている。
もともとは3Dレコーディング技術を使った実験から創案され、相互に連結したふたつのパートから成り立つ本作は、「The Ship」と名付けられた21分越えの深く壮大な楽曲で幕を開ける。続く「Fickle Sun」は3つのムーヴメントを展開。第一部では「The Ship」のエンディングを引き継いでいるものの、イーノの声はよりダイレクトかつ決然とし、かつ絶望的にすら響く。第二部では革新的なiPhoneアプリ Bloom をイーノと共同開発したことでも知られるピーター・シルヴァースが新たに開発したマルコフ連鎖発生機で生成された詩を俳優・声優としても知られるピーター・セラフィナウィッツが朗読、第三部のフィナーレを飾るのはイーノが歌うザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド曲「I'm Set Free」、そして国内盤にはボーナストラック「Away」を収録。
発売・販売元 提供資料(2016/03/03)
3年ぶりのソロ作は、アンビエント路線ともロック路線とも異なる独特な雰囲気を持った仕上がりで、大きく2つのパートから成り立っている。第1章の"The Ship"は、静かに反復を繰り返すドローンの波間を、囁きめいた数々の声の断片と、イーノの沈鬱な詠唱が小舟のように揺曳する大曲。第2章の"Fickle Sun"は3部構成で、前曲の流れを継承しつつも次第にノイジーでドラマティックなウネリを増す1部から、俳優のピーター・セラフィノウィッツによる乾いた朗読がクールな2部へと進み、3部の驚くほど柔和なヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカヴァーによって、美しい余韻を残しながら幕を下ろす。タイタニック号や第一次世界大戦からインスパイアされたという本作は、人間の愚かさと世界の無常を軸に、過去から現在、そして未来へと連続する幾多の物語のコラージュを封じ込めた、〈音楽による観念的小説〉とでも言うべき一枚であり、イーノのキャリアにおいても比類のない存在感を放つ名品となった。
bounce (C)北爪啓之
タワーレコード(vol.390(2016年4月25日発行号)掲載)