ACT Musicを代表する現代最高峰のトロンボーン奏者であり、サウンド・クリエイターであるニルス・ラングレンの新作。
ニルス・ラングレンというアーティストは、実に多種多芸。トロンボーン奏者として活躍するのはもちろんのこと、ビッグ・バンドの優れたアレンジャー、コンダクターでもあり、ある時はジョー・サンプルらとのコラボで、アーシーで最高にクールなファンク・サウンドを披露。そうかと思うと、全曲ヴォーカルの作品を創ったり。そのヴォーカルが、マイケル・フランクスを彷彿とさせる極上のAORの味を持っていたりするから、その才能には脱帽です。そんなニルス・ラングレンが、今回は20世紀の偉大なる作曲家レナード・バーンスタインにトリビュートする作品を制作。レーベルのプレス・リリースによれば、企画はアーティスト本人のものではなくACTの社長シギ・ロッホ氏とのことで、ニルスは作品制作の必然性を模索していたのだとか。しかし、構想を練り、ニルスが心から納得のメンバーを迎えられることになり、実現に至ったとのことです。核となるのは、カルテット。ニルスと同じスウェーデン生まれのヤン・ラングレン、クラシックのプロジェクトでも成功を修めるディーター・イルク、そして大御所ウォルフガング・ハフナー。そして、6度のグラミー賞も受賞する鬼才アレンジャー、ヴィンス・メンドゥーサが18ピースのオーケストラを率い、ニルスと共に、ヴォーカルとして、ジャニス・シーゲル(マンハッタン・トランスファー)を迎えるという豪華さ。ニルス自身、レナード・バーンスタインの娘とも友達でありブロードウェイのフィーリングを吹き込むジャニス・シーゲルの貢献は、計り知れないと語っていますが、彼女が参加した6曲では、アルバムに華やかな色彩が添えられています。
驚くのは、18人のオケがストリングス無しの木管と金管のみでの編成であること。しかし、そのアイディアも大成功。木管、金管のみで創りだすハーモニーは、温かみと豊穣な響きをたたえながら、過度な甘さが抑えられたビター・スウィートな風合い。その管楽器の響きが、ソフトなニルスの声とマッチして、いい味わいを出しています。また、カルテットのバックをつとめる3人の演奏とオケが、隔てなく自然に融合しており、参加メンバー全員が一体化しているのも印象的です。オープニングを始め『ウエスト・サイド・ストーリー』の楽曲を核にしながら、1944年、ジーン・ケリーとフレッド・アステアを迎えて大成功を修めた『オン・ザ・タウン』の"Some Other Time"といった曲もフィーチャー。古き良きアメリカを象徴するようなミュージカル・ショーの華やかさと、ジャズ奏者としての活動をコアに、ポップス的なサウンドでもセンスを発揮するアーティストのフィーリングが最高にうまくブレンドした作品!大人なクラシカル・ジャズ・ポップ・アルバムです。
発売・販売元 提供資料(2016/02/04)