エスペランサ流ポップ・ワールド満開!グラミーで最優秀新人賞に輝いた"現代ジャズ・シーン最高の才媛"、4年ぶりとなるアルバム。アルバムごとに綿密に構築したコンセプトによるプロジェクトで話題を集めているエスペランサだが、今回は2015年に発足したニュー・プロジェクト"エミリーズ・D+エヴォルーション"による作品。自身のミドルネームである"エミリー"を冠し、誕生日の前の晩に見た夢の中に出てきたというキャラクター(=もうひとりの自分)を主人公として、人間の"進化(Evolution)"と"退化(Devolution)"を表現するミュージカルのようなコンセプト。ふたりのバック・コーラス~ギター~ドラムス、そしてエスペランサのベース&ヴォーカルというシンプルなバンド編成で、かつてなくロック、ポップ色の強いサウンドに仕上がっている。 (C)RS
JMD(2016/01/13)
グラミー受賞を経て醸造された通算5作目は、クリスチャン・スコットも愛でるギタリストのマシュー・スティーヴンス、そしてストーンズ・スロウにソロ作も残すデトロイト屈指のドラマー、カリーム・リギンスを従えた5作目。トニー・ヴィスコンティを総指揮に迎え、ジャズメンと共に★に生まれ落ちたオルター・エゴを探求するコンセプトに、〈新しいジャズ〉的な聴き方を楽しむのはもちろん至極真っ当であろう。さらに、トリオ編成の語彙を逸した(いや、取り戻した?)劇的な表現は、進化に行き詰まったポスト・ロックの矛先がケンドリック・ラマー以降のブラック・パワーを獲得して泳ぎ出したハードコアな瞬間として受け止めても実に興味深い。その雄弁なベース・プレイと歌声の染み渡るミッド"One"や、パーラメントをバックにノラ・ジョーンズが可憐に踊るような"Funk The Fear"など……ぜひ貴殿の耳でその〈サウンド・オブ・ミュージック2016〉の真相を確かめていただきたい。
bounce (C)ヌーディーマン
タワーレコード(vol.389(2016年3月25日発行号)掲載)