世界的に評判となった『D'Ya Hear Me!』(EM1108CD/LP)は、ブレンダ・レイのナッフィー時代のヴォーカル曲とリーダー録音を集めたキャッチーな内容(なんかね?)だったが、今回の『フーチー・プーチ/宇宙ワニ』は再初期のトリオ時代、ナッフィー・サンドイッチを名乗った音源と、ブレンダの相棒でもうひとりのナッフィー、フレディー・ヴィアダクトのリーダー作をコンパイルした、より強烈濃厚な内容。『D'Ya Hear Me!』と本作『フーチー・プーチ/宇宙ワニ』でナッフィーの陰陽が補完される。
このナッフィー・サンドイッチは、70年代の英ジャズ・シーンにいた3人のミュージシャンが、より高い次元で創作性を解き放つため(思い付いたことを即実行する)ルール無用ぶっつけ本番の「録音ユニット」だった。時代的にはヨーロッパでフリージャズ/エレクトリック/フリーインプロが盛んで、レゲエが英で台頭した時期でもあり、特にレゲエのダブのアルバムの出会いがナッフィーの音に大きく作用した。また、彼らは出自がジャズであり、ロック・ミュージシャンでなかった点が重要。
マンチェスターとリバプールの間にある小さな街で、週末に集っては怪しい新発明アイデアを互いに披露し、ゲラゲラ笑いながら誰に聴かせるでもなく録っていたという作品群。今も凄まじく衝撃的だ。粗悪なLSDを食ったアシッドサイケ・バンドのダブ・インストのような表題曲「フーチー・プーチ」、エルヴィスがリー・ペリーのブラックアークで録ったのか?「スペース・アリゲーター」など、なんだかよく分からない録音ばかりが集まった。
彼らが残したのは激レアな5種類の手製カセットと7インチ・シングル2枚、活動の締めにまとめたLPだけ。この音源をメンバーのアーカイブから引き上げ、未発表長尺版、未発表曲など掘り起こして臨んだナッフィー・サンドイッチ集大成。ポストパンク魂で溢れるこのコレクション、今こうして手に入る事を喜びんましょう。
発売・販売元 提供資料(2015/12/16)
UKレゲエ・シーンの異端女子、ブレンダ・メイがキャリアの最初期に組んでいたバンドのお蔵出し音源集。テキトーにダベりながら突飛なアイデアを即興演奏してレコーディング、といった〈思いつき原理主義〉を貫くサウンドは、ダブとフリージャズとサイケを横断したポスト・パンクとも表現できるが、きっと本人たちは何も考えていないんだろうな。溢れ出る好奇心がピュアにスパークした、愛すべき珍品である。
bounce (C)北爪啓之
タワーレコード(vol.357(2013年7月25日発行号)掲載)