90年代の西ロンドンに発祥したブロークン・ビート・シーンの人気バンド、SK RADICALSのリーダー、ショーン・カーン(SEAN KHAN)。ソウルミュージックとジャズをこよなく愛し、そしてアップデートさせてきた実力派ミュージシャンである。本作「マリエル」は、ジョン・コルトレーン、ジャコ・パストリアス、ハービー・ハンコック、ギル・スコット-ヘロンといったジャズの巨星たち、そしてGOYA MUSICなど彼自身を大きくサポートした重要なレーベルに敬意を払った作品だ。クラシック、フリー、ラテンなどあらゆるジャズ、そういった先人たちの実績を引用しながら、数々の実験を行って作り上げられたブロークンビートのシーン。そして、本作もその精神上にあり、伝統と進化を表現した作品となっている。自身のサックスをメインに、ピアノ、ベース、ドラムによる美しく感動的なグルーヴをリスナーに惜しみなく与え、さらに豪華ヴォーカリスト達がさらなる深みを与える。アジムス(AZYMUTH)のメンバー、アレックスの娘であるサブリナ・マリェイロス(SABRINA MALHEIROS)、シネマティック・オーケストラ(CINEMATIC ORCHESTRA)のメンバー、ハイジ・ヴォーゲル(HEIDI VOGEL)、アシッドジャズ黎明期からUKソウルを牽引したネオ・ソウルの代表的アーティスト、オマー(OMAR)が参加している。オマーが参加した"Don't Let the Sun Go Down"はアルバムのハイライト的なモダン・ソウルの傑作だろう。アルバムとしての完成度もさることながら、先行でリリースされていた12inchアナログレコードのリミックス音源も収録。先ごろアルバムをリリースしたディーゴ(DEGO)率いる4HERO、UKの次世代ビートダウン・プロデューサーとして注目を集めるヘンリー・ウー(HENRY WU)など聴きどころも増量。自身のルーツを探求し、そしてハイクオリティーなジャズ・サウンドをプロデュースした・カーンの「マリエル」はファー・アウトの新時代を感じさせる傑作!!
発売・販売元 提供資料(2015/12/09)
別格級のディーゴやポジティヴ・フロウ、リール・ピープル周辺など、ブロークン・ビーツ以降のクロスオーヴァー勢がしぶとく地力を見せつけているここ数年だが、今度はSKラディカルズことショーン・カーンが4年ぶりのアルバムをリリース! ダイアナ・マルティネスの歌うワンダーな冒頭曲をはじめ、ファー・アウト仲間のサブリナ・マリェイロスやハイジ・ヴォーゲル(シネマティック・オーケストラ)を迎えたヴォーカル・ナンバーの洒脱さはもちろん、直線的では終わらないインスト群も実に雄弁。白眉はオマーの快唱が躍る“Don't Let The Sun Go Down”。界隈の次世代を担うヘンリー・ウーや、4ヒーローによるリミックスも素晴らしい。往年のニュー・ジャズ・リスナーにも戻ってきてほしい傑作です。
bounce (C)出嶌孝次
タワーレコード(vol.387(2016年1月25日発行号)掲載)