アン・バートンと共に、オランダにおいて、二大ヴォーカリストとも言われたリタ・ライスのトリビュート・コンサート。その主役、ヒロインを演じる歌姫は、フェイ・クラウセン。言わずもがな、クラウセンは、当代のオランダ女性ヴォーカルでは最も注目を集める人であり、リタ・ライスの正統的な後継者と言われる存在。トリビュートするなら、この人以外にあり得ない!というキャストですが、ピアニストには、同じくトップの実力と人気を誇り、さらに、ライスの晩年のピアニストをつとめた、ピーター・ビーツ。さらに場所は、名門コンセルトヘボウ。最高の舞台が整ったコンサートといえます。
クラウセンと、ビーツは、コンスタントに共演し、ステージを共にする関係。相性の良さはおなじみですが、決して気張らず、余裕をもちながら、スウィンギーに演奏を繰り広げるのは、さすが、トップ・アーティストと感じます。来日コンサートでは抜群のテクニックと、サービス精神でコンサートを盛り上げたピーター・ビーツがここでは、歌手クラウセンのピアニストとなって、陰に日向に大活躍。ドラムレスのクラシック・スタイルのトリオ・スタイルも雰囲気抜群で、リズミカルなコンピングが、バンドに絶妙のスウィング感をもたらす他、軽妙で洒脱なピアノには、古き良き時代のジャズの良さが薫ります。またバラード演奏でのロマンティックさも、魅力です。
どの曲もスタンダードの良さがありますが、中でも、ヘレン・メリルの名唄であまりにも有名な"You'd be so nice tocome Home"は、メンバー全員の味わいが溢れた演奏。ベース・ラインのみをバックにしたテーマの歌はもちろんのこと、クラウセンはここで見事なヴォーカリーズを披露。ビーツのシンプルなブロック・コードだけをバックにして歌う自在なアドリブには、間違いなく本格派の実力があります。
リタ・ライスは2013年惜しくも生涯を閉じましたが、自分が好んだピアニストと、後輩ヴォーカリストの共演を、天国から微笑んでみていたのではないでしょうか?2014年7月、ダッチ・ジャズの充実を語る一夜の記録です。
発売・販売元 提供資料(2015/10/27)