ジョージ・デュークが生涯最後の10年をかけたプロジェクト
クリスチャン・マクブライドのベースをフィーチャーした組曲
リトナー初期傑作をオーケストレーション
B.カンリフ・トリオをフィーチャーしたラプソディ・イン・ブルー
豪華メンバーがジョージ・デュークの構想を形にした作品!
2002年に設立されて以来、ロサンジェルスを拠点に、ジャズとクラシック音楽を融合する果敢なる挑戦を続ける非営利団体、Symphonic Jazz Orchestra(SJO)のデビュー作にして壮大なるプロジェクト作品。
オーケストラと共演するメンバーには、見ての通り、錚々たるアーティストがフィーチャーされていますが、実に原点は、SJOのミュージック・ダイレクターのミッチ・グリックマンと、あの、ジョージ・デューク!!!2004年にプロジェクトが発足して以来、約10年の時を経て、完成した作品になります。
ジョージ・デュークは、このSJOと演奏を共にしたのみならず、オーケストラの共同音楽監督となり、アイディアを煮詰め、クリスチャン・マクブライドのための組曲を作曲。2011年に初演し、ただちにレコーディングへの情熱を抱いたとのことです。
そして、翌2012年にはリー・リトナーの初期ヒット作『キャップテンズ・ジャーニー』を元にしたオーケストラ化に着手。また続いて2013年には、ジャズとクラシック音楽の融合を図った作品として音楽史上に燦然と輝く<ラプソディ・イン・ブルー>のアレンジを、構想。本作品のタイトル『Looking Forward Looking Back』を考えたのも、ジョージ・デューク自身で、レコーディングも正に現実的となっていました。しかし、2013年8月、ジョージ・デュークは志半ばにして、世を去ってしまいます。メンバー及び、関係者が悲嘆にくれたのは言うまでもありません。しかし、30年余りの間ジョージ・デュークのエンジニアを勤めたErik Zoblerが共同プロデューサー及びエンジニアともなり、この作品が出来上がりました。
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発売・販売元 提供資料(2023/06/21)
歴史的に見て、ジャズとクラシック音楽を融合する試みは、今では決して珍しくないものではなくなりましたが、本作は一聴瞭然、数多ある類似作品とは一線を画します。
<ダーク・ウッド>と題された4部構成のオープニングでは、もちろんクリスチャン・マクブライドのベースが魅力。ふくよか、かつ、鋭角的な響きの管弦楽が描く劇的な展開の中で、クリスチャンは、アコースティック、エレキ、フレットレス・エレキ、すべてを駆使。中でも、第4楽章で見せるスリリングなアンサンブルと、エレキ・ベースの共演は聴きもの!です。
続く<シンフォニック・キャプテン・ジャーニー>では、オーケストラの中で、リー・リトナーが華麗なソロをとるほか、作品のオリジナル・メンバーであるデイブ・グルーシンも匠の仕事を見せてくれます。
ラストは、このSJOの正に原点となる<ラプソディ・イン・ブルー>を、ビル・カンリフのピアノをフィーチャーして演奏。ベースにはロバート・ハースト、ドラムにはピーター・アースキンが加わり、ジャズの即興色も濃厚に。これぞ、21世紀のニュー・ヴァージョンといえましょう。
エンジニアのエリック氏いわく、"ジョージ・デュークによるオーケストレーションは、あまり知られてないけど、そこには彼が愛したストラビンスキーからファンク、スパニッシュ、R&Bの要素すべてがあるんだ"とのこと。亡くなるまで多忙を極めた人生の中で、最後の10年間、精魂を込めたプロジェクト!結果として、ジョージ・デュークの、作曲家としての、またオーケストラの編曲家としての才能も明らかにした作品を、エリックも喜んでいるとのことです。
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発売・販売元 提供資料(2023/06/21)
一瞬、本質を見落とす凄いアルバムだ。ジャズの伝統が確実に歴史になりつつあることを再認識させてくれる一枚。マクブライドを起用した新作のほか、リー・リトナーやプロデューサーのジョージ・デュークなど70年代以降、名を馳せたミュージシャンたちが敬愛を持ち続けた作品へ捧げた作品を収録。リトナーのメロデイックな作品がオーケストレイションによって格調高く変身し、シャズの認識を変えた《ラプソディー・イン・ブルー》は新たな命を吹き込まれた。長い音楽歴を誇るデュークならではの高いレベルはその意思を見事に開花させてくれた。正統派ジャズファンにガッツリ聴いてほしい豪華作品。
intoxicate (C)瀧口秀之
タワーレコード(vol.118(2015年10月10日発行号)掲載)