AIRとBACHが織りなす対位法?!AIRのニコラス・ゴダンが、グレン・グールド、そしてバッハからインスピレーションを受けて作り上げた崇高でアンビエントな音像。ゴードン・トラックス、コナン・モカシン等の友人をゲストに迎えて完成させた初ソロ・アルバム『COUNTREPOINT』が今、そのヴェールを剥ぐ。
ここ日本でも根強いファンを持つ、フレンチ・エレクトロ・ポップ・デュオ、エール。そのニコラス・ゴダンがソロ・アルバム『COUNTREPOINT』をBecause Musicよりリリースする。AIRとして7枚のスタジオ・アルバムをリリースしてきた彼だが、ソロ・アルバムは本作が初となる。
2010年にAIRとしてツアーしたニコラスは、日々の生活で音楽が占める割合がとても小さいのに気づき、行き詰まりを感じるようになったという。「僕はグレン・グールドが言うところの"コンサート・サーキットに載せられて旅する猿"のようなものになってしまったのだ」と彼はその頃の自分について振り返る。
そんな頃。ブルーノ・モンサンジョンによるグレン・グールドについてのドキュメンタリー「Hereafter」と「The Alchemist」をミュージシャンの友人に勧められて見たところ、常識や通説に囚われない偉大なミュージシャン、グールドの偉大なる音楽家バッハの大胆な再解釈にひどく心を動かされ、その神秘的で到達しがたい音世界を探求したいと思うようになった。
その結果生まれたのが本作『COUNTREPOINT』である。ゴダンのエレクトロ・ポップな要素にクラシックの様式が融合した本作には、バッハの要素に様々な形のリズムやトーン、ジャンルが重なり、また時には囁くようなヴォーカルが横糸のように射し込まれ、崇高でアンビエントなサウンドスケープを作り出している。
ニコラスは、AIRでも仕事をしてきたキーボードリストでありバッハのスペシャリストでもある、Vincent TaurelleとパリにあるAIRのスタジオ、Studio de l'Atlasと一緒に本作の制作に取り掛かった。バッハのスコアの一部分をとり、新しいパーツを作り上げる方法で完成したのは8曲。いずれもバッハの楽曲が基に流れている。そして、それらの音楽をレコーディングするにあたって、ゴードン・トラックス(フェニックスのトーマス・マーズの変名)、ブラジルのシンガー、Marcelo Camelo、イタリアの作家、Alessandro Barrico、そしてシャルロット・ゲーンズブルのバンドでも活躍するコナン・モカシン、さらにはマケドニアのF.A.M.Eプロジェクトのコーラス隊などが参加している。
本作について、ニコラスはこう語っている: 「『COUNTREPOINT』を聴く人たちがバッハのことを気づかずに聴いてくれればいいなと思っているんだ、なぜならこれは僕に影響を与えた全ての偉大なる作曲家へのトリビュートみたいなものだからね。バッハについてのアルバムを作るのは、バッハを聴いた作曲家全員に連なることだからね」
発売・販売元 提供資料(2015/08/07)
Clash (Magazine) - "It is, perhaps, entirely fitting that an album inspired by one of the greatest classical musicians of all time should be so perfectly rendered."
Rovi
エールの片割れが初のソロ作を発表。EDMを意識したと思しき冒頭曲こそ派手な鳴りだが、2曲目以降は静謐なピアノやオーケストラを用い、古き良きシャンソンやジャズまで採り入れて麗しいサウンドスケープを描いている。とりわけグレン・グールドによるバッハの大胆な再解釈にインスパイアされたらしく、そのスコアや思想をタペストリーのように編み上げたポスト・クラシカル風情の楽曲群は、本人いわく〈偉大なる作曲家へのトリビュート〉だそう。レコーディングにはゴードン・トラックス(フェニックスのトマの変名)やコナン・モカシンらも参加。グールドの肉声をサンプリングした"Glenn"は、ジョルジオ・モロダーの語りをフィーチャーしたダフト・パンクのあの曲を連想させますね。
bounce (C)上野功平
タワーレコード(vol.384(2015年10月25日発行号)掲載)