クラウディオ・フィリッピーニ、驚きのスタンダード集
原曲のままに取り組むあり、ヒネリあり、エレクトロあり
10年の活動歴となったメンバーとの挑戦
イタリアCAM JAZZが、エンリコ・ピエラヌンツィに次いで、大きくプッシュするピアニスト、クラウディオ・フィリッピーニの新作は、なんと・・・スタンダード集。
ファブリジオ・ボッソ、マリオ・ビオンディのバンド・メンバーとして来日もして、ヨーロッパのジャズに注目するファンの間では、日本でも既に人気を博すのが、フィリッピーニ。そのフィリピーニですから、本作は、まさかのコンセプト・アルバムです。
しかし、スタンダードに楽しくヒネリを加えたのが、本作。有名曲を取り上げつつ、リスナーの予測をきれいに裏切った作品になっています。
アレンジの仕方はさまざま。コード進行と、メロディの核を少しだけ残し、原曲を解体しつつ、ノスタルジックなポップス・ナンバーのように描き上げてしまう<インプレッションズ>のようなナンバーあり、ミステリアスなイントロを頭に据え、曲途中で原曲の進行が登場、まるで書かれたメロディのような精緻なアドリブにつなげていく<枯葉>の展開は先輩エンリコ・ピエラヌンツィの<いつか王子様が>の手法のよう。一方では、<I didn't know what Love is>のように原曲に真正面から取り組んだと思うと、一聴ファッツ・ウォーラーのトラッド的世界に見せかけて部分移調するようなフレーズを織り込んだり、小気味よいテンポ・チェンジを入れ込んだ秀逸な<Jitterbug Waltz>のようなナンバーも。そして驚きは大胆にエレクトロなイフェクトをかぶせた<ラウンド・ミッドナイト>や<ストールン・モーメンツ>。サンプリングを大胆に入れ混んだ演奏はちょっとハンコックを意識?しかし、この多様さとアレンジ力、そして曲順を含めた作品構成力が本作の肝。映画のエンドロールのバックとしても行けそうなラストまで、9曲がいろいろなドラマをつくりだします。
フィリッピーニ曰く「演奏するとは、既存のものを更新し、再創造すること。伝統的でありつつ、エクスペリメンタルな感覚を取り入れ次の世界につながるのを創りたかった」とのこと。トリオとして10年の演奏活動歴となった原点のメンバーとの尽きない挑戦がここにあります。
発売・販売元 提供資料(2023/06/21)