ベル・アンド・セバスチャンが、『ハピネス』でカルト的人気を集めたトッド・ソロンツ監督作品の為に書き下ろしたサウンドトラック盤。全曲新録(当時)ということで、準オリジナル・アルバム的位置づけ。監督の意向と合わず、結果的に映画の中では1分程度しか使用されなかったといういわくつきの作品。オリジナル・リリースは2002年。 (C)RS
JMD(2015/05/21)
トッド・ソロンズ監督の映画の登場人物にはなりたくない。ほんのチョイ役でもカンベンしてほしい。映画を観てさんざん笑っておきながらそんなふうに思うのは、〈笑えるドラマ〉にくるまれた悲惨な人間関係のどこかに、自分と同じ立場の人を見つけてしまうからでしょうか? 今回は〈ストーリーテリング〉という罪つくりな題材を武器に、2部構成で〈笑えて悲惨な関係〉を描き出していく。第1話〈フィクション〉では、小説家志望の女子大生が創作と実体験の狭間でドツボにはまり、第2話〈ノンフィクション〉では、現代の高校生の実体に迫るはずの社会派ドキュメンタリー映画が、撮れば撮るほど〈笑える他人事〉に迫ってしまう、という毒気充満の内容。誰だって自分の悲劇は笑えない。身体障害者の彼氏とケンカして黒人教師へ走るリベラルな女子大生ヴァイも、男子便所でマリファナ吸いながら〈有名人になりたい……〉なんてアホなことを考えている無気力高校生スクービーも、まさか人の目には自分が笑える存在だとは夢にも思ってないわけで。だから他人の反応を前に自尊心をボロボロにやられてしまうわけです。「登場人物は全員、ボク自身」と言うソロンズ監督。その徹底的に自虐的な演出で、今回もどうしようもない因果律や屈折したエモーションをビシビシ描き出してくれます。そして、そんなキビシイ青春物語を春風のように優しく撫でるサントラは、ベル&セバスチャンが担当。このミスマッチ具合、この居心地悪さがまたリアルです。それにしても、スクリーン上の〈笑い事〉に腹をよじっているうちに観客自身がチョイ役と化す今回の仕掛けのキツイこと。……痛っ!!
bounce (C)中野 聡子
タワーレコード(2002年11月号掲載 (P139))