大巨匠ベニー・ゴルソンも参加したスウィンギーでダンディな一作
パウエルが乗り移ったかのようなトリオ演奏も・・・
歴史をさかのぼるハーレムの薫りも漂う渋みと現代性
ライナーノーツはイーサン・アイヴァーソン
"アメリカン・ピアニスツ・アソシエーション"の主宰するコール・ポーター・フェローズ・アワーズ、2011年優勝者であり、ジュリアードが生んだ秀才アーティストと言われるアーロン・ディールのMack Avenue第二弾!
自主盤もリリースしていましたがMackAvenue第一弾『The Bespoke Man's Narrative』で、ワールドワイドに知名度をアップ。デューク・エリントンや、ジョン・ルイスといった巨匠の音楽の本質に迫る演奏で、大きな評判となったのは、言うまでもありません。
そして、本作には、世代を超えたメンバーが集結しました。
29歳のディールのトリオのフロントに立つのは、同じく20代のブルース・ハリスから、大巨匠ベニー・ゴルソンと、ジョー・テンパレイ!マエストロ二人は御年85歳。上から下の年の差は半世紀に及ぶのです。しかし、コンセプトは揺らぐことのないものがあります。
一言でいえば、伝統にしっかり根ざし、歴史を受け継ぐ演奏!
8編の演奏は、曲により、それぞれアーティストをゲストで迎えますが、オープニングから決意表明は明らか。核となるトリオでの演奏は、ウォルター・デイヴィス・Jr.が作曲し、アート・ブレイキーがレパートリーにしていた!ディールのメンターであるケニー・ワシントンは、この曲を作曲者のウォルター・デイヴィス・Jr.から直々に学んだという縁あり、この曲との出会いにはアーロン自身、特に大巨匠とのつながりを意識する曲であったよう。スウィンギーかつ、グルーヴ感を感じさせる演奏は、まさしく、そうした歴史への敬意でしょう。また8編中、もうひとつのトリオでの演奏によるM7は、アーロン・ディールのコンポジションでありつつ、バド・パウエルも乗り移ったような演奏。この曲に、パウエルのブルーノート作品の演奏を思い起こすファンも少なくないことでしょう。この指の動き、さすが、秀才!です。
しかし、演奏はそうしたバップ/ハード・バップだけにとどまることなく、古くは、ハーレムの薫り漂う時代までさかのぼったりもします。特にM2は、エリントン楽団や、ウッディ・ハーマン、サドーメルなど数々のビッグ・バンドで活躍してきたテンパレイの渋いバリトンをフィーチュアしたダンディズム溢れるバラード・ナンバー。またM4は組曲的な曲構成で、若きハリスと、大御所ゴルソンが共演。ミュート・トランペットも雰囲気豊かに、13分に及ぶなかで20,30年代的な世界から現代を行き来する演奏が印象的です。
抽象画のようでもあり、禅的とも見えるジャケットのアートも粋。30歳を目前に控えた才能を持ったアーティストが、表現を深めていく様を感じる一作です。
発売・販売元 提供資料(2023/06/21)